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リスク対策.com誌面より


BCPの新たな課題従業員のメンタルケア

2012/04/23 19:02 に Kosuke Nakazawa が投稿   [ 2012/04/23 19:29 に更新しました ]

BCPの新たな課題、従業員のメンタルケア
インタビュー松井 豊教授筑波大学人間総合科学研究科




東日本大震災から10 カ月がたった今も震災時のショックから立ち直れない人がいる。大切な家族や友人を失った被災者だけではない。人命救助など被災直後から現地で支援にあたった警察官や消防士、自衛官、看護師、あるいはボランティア活動に参加した人や、被災地には行ったことのない人の中にも、役に立てなかったことなどを悔やみ、重度のストレスから抜け出せないといったケースもあるようだ。組織の事業継続において、メンタルケアは新たな重要課題になる。筑波大学人間総合科学研究科の松井豊教授に聞いた。


Q、なぜ今、メンタルケアについて考える必要があるのでしょう。
 東日本大震災後、現地で活動された消防士や看護師、ジャーナリスト、あるいは被災された保育園の保育士さんのメンタルケアに関わらせていただいているのですが、こうした職種では悲惨な現場などを見た後に起こりやすい惨事ストレス、あるいは外傷性ストレスともいいますが、このような症状が顕著に現れています。
 実はメンタルケアの必要性は、1995 年の阪神淡路大震災、2001 年の歌舞伎町の雑居ビルの火災、世界的には米国で起きた2001 年の同時多発テロの頃から取り上げられているのですが、これまでは、災害現場での救助活動など最前線に立つ人の問題と考えられていました。それが、最近ではより広い業種から関心が向けられるようになってきたのです。


Q、なぜ、より広い業種から関心が向けられるようになったのでしょう。
 社会的な背景としては、まず、そういう人たちもストレスを受けるという具体的なデータや学術的な裏づけが出てきたことが挙げられます。2つ目は、こうした問題が繰り返し取り上げられることで社会全体の関心が高まってきたということです。3つ目の理由は、経営上のリスクの回避です。こうしたストレスを放置すると、特に年配の方ではうつ病に発展するケースがあり、結果、高い技能を持ったベテラン職員や社員が使えなくなってしまうわけです。
 経営上のもう1つの問題には、訴訟対策ということもあります。心的外傷後ストレス障害(PTSD)については、国内でも加害者に対する訴訟例はいくつか報告されていますが、こうした直接的な加害者に対する責任追及ではなく、管理者である会社、あるいは組織が、従業員がストレス症状をうったえたのに適切な対処をしなかったことで、安全配慮義務を満たしていないと訴訟に発展するケースもありえるということです。実際、海外では、損害賠償にまで発展した例もあると聞いています。4つ目が、コミュニケーション環境の変化です。消防を例にしますと、昔は、消火活動が終わったら、だるまストーブを囲んで先輩、後輩が会話を持つことができたんですね。先輩が自分の体験談、失敗談を話たり、男性の職場だから多少エッチな話もしたでしょう。とにかく笑いながら、楽しくコミュニケーションがとれた。


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相互運用性がレジリエンスを高める

2012/04/22 22:59 に 中澤幸介 が投稿   [ 2012/04/22 23:10 に更新しました ]

相互運用性がレジリエンスを高める
インタビュー 渡辺研司 名古屋工業大学大学院教授
※レジリエンス:事故や災害など危機に対する対応力を表す言葉。「しなやかな回復力、再生力」 などと訳される。

ISO / TC223 でWG 1の議長を務める名古屋工業大学大学院の渡辺研司教授に、TC223 が最終的に
目指す社会の姿、今後の課題などを聞いた。

Q、ISO / TC223 が目指す社会はどのようなものですか?

 キーワードは「相互運用性」だと考えています。「災害対策など組織単体の取り組みをいくら積み上げても、社会全体のレジリエンスを高めることにはなりません。社会全体を考えれば、官民を問わず複数の組織が同じ基準で共通言語のもとで連携して取り組めるようにすることが重要です。
 特に今回の東日本大震災のような広域災害になれば、海外から支援部隊が来たり、自治体レベルでも、全国からさまざまな応援を受け入れることになるわけですが、同じ指揮命令系統の中で、スムーズに動けるようにするためには、あらかじめ、そのための基準や枠組みを決めておくことが求められます。陸続きに国境が接している欧米では、河川の汚染や洪水、噴火など、国をまたいだ災害は常に起き得ます。欧米が危機対応の国際規格化に積極的なのは、こうした事情もあるのでしょう。

Q、民間企業においてはどうでしょう?

 民間企業についても、今回の震災、また昨年7月末からのタイの洪水では、サプライチェーンの被災により、さまざまな製品の製造が停止するなどの影響が出ましたが、やはり国際化が進む中では、サプライチェーンも含めた災害対応力の向上が一層求められてきます。
 その際、自らが事業継続マネジメントを構築することはもちろん意味がありますが、新興国などのパートナー企業に対しても、事業継続力を高めてもらわなければ、結果的に組織のレジリエンスは高まりません。そのためにも、評価基準となる規格は有効なはずです。

 ただし、これまでのISO のやり方では、取り組むのにお金がかかりすぎ、相手に求めにくいという問題があることも事実です。また、ISO では、認証したか、しないかの二者択一的な評価しかできず、どの程度まで取り組んでいるかという成熟度とかベンチマーキングの考えがありません。よく、私はTC223 の事務局との議論を通じて、ISO は「レシピ」であるという話を聞かされるのですが、そこには作り方が書いてあるだけで、どこまでうまく作れるかは自分たちで工夫するしかないわけです。その意味では、ISO の規格をもとに、1-5段階でどの程度まで取り組んでいるかを、業界で判断できるようにするとか、取引業者間で確認し合えるような方法にするなど、運用についても工夫が必要になってくると思います。


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危機管理のISO到来

2012/04/19 20:42 に 中澤幸介 が投稿   [ 2012/04/23 19:08 に Kosuke Nakazawa さんが更新しました ]

危機管理のISO到来 
 国際規格で組織は強くなる



危機管理の国際規格が相次いで発行される。ISO(国際標準化機構)では、TC223(社会セキュリティ)という専門委員会が中心となって昨年11 月にISO22320(危機管理-危機対応に関する要求事項)を発行した。今年7月~8月には、事故や災害時における企業の事業継続を達成させるための、日常的な事業継続マネジメントのあり方をまとめたISO22301(事業継続マネジメントシステム)も誕生する。  東日本大震災や昨年7月末のタイの大洪水では、被災した企業だけでなく、直接被災していない企業でもサプライチェーンが途絶し、一部製品の製造が止まるなど世界的な影響を招いた。今後、国内外のサプライチェーンと連携する上で、こうした危機管理に関する国際規格への取り組みが、災害対策に関する共通言語として求められる可能性は十分ある。日本の組織はどう国際規格に向き合っていけばいいのか?規格誕生の背景から、概要、最新の開発動向までをまとめた。


 品質マネジメントシステム(ISO9000 シリーズ)や環境マネジメントシステム(ISO14000 シリーズ)などで、すでに国内でも馴染みが深いISO 規格。発行するのは、民間の非政府組織であるISO(国際標準化機構:本部スイス ジュネーヴ)だ。同組織では、電気分野を除く工業分野について、国際的な標準である国際規格(IS)を策定している(電気分野についてはIEC:国際電気標準会議が国際規格を開発)。その危機管理に関する規格が昨年末から量産体制に入った。

  先陣を切ったのは昨年11 月に発行されたISO22320(危機管理-危機対応に関する要求事項)。今年7月~ 8 月には、事業継続マネジメントシステム(BCMS)規格のISO22301 も誕生する。このほかにも、官民連携、演習・テスト演習・テスト、用語、緊急事態における集団避難など、10 以上の規格開発が進行中だ。

 そもそもISO では、主要な産業分野の標準化を、TC(Technical Committee)と呼ばれる専門委員会の下で行っている。TC 1(ネジ)やTC 2(ボルト・ナット類) からTC 229(ナノテクノロジー)までがあり、危機管理はTC223(社会セキュリティ)が担当している。

 TC223 の出発は、2001 年9月11 日に米国で発生した同時多発テロまでさかのぼる。9.11 以降、テロ対策や、あらゆる災害への対策を強化していた米国では、国家や自治体などの組織体系を見直すとともに、民間部門の危機対応力を高めるための仕組みとして、国際標準化機構(ISO)に対して、災害対応力の向上に関する国際規格を開発することを呼びかけた。米国内で発生するテロや災害だけでなく、ビジネスがグローバル化した現在では、国際的な危機対応力を向上させないと、米国だけではそれを達成できないためだ。

 米国の働きかけを受け、ISO では2006 年4月に伊フィレンツェで災害対応力向上の国際規格を実現するための国際ワークショップ協定IWA(International Workshop Agreement)にもとづく会議を開催し、そこで米国規格協会(ANSI)が暫定規格を作ることを提案した。ちょうどこのころ、英国や日本、豪州やイスラエルでも、BCP の国内規格やガイドラインを作っていたことから、それぞれの参加国が規格やガイドラインを持ち寄り、国際規格の大きな枠組みについて議論した。ちなみに、日本の内閣府が事業継続ガイドラインを策定したのは2005 年8月のことだ。

 このIWA 会議に参加した東京海上日動リスクコンサルティングの岡部紳一氏によると、会議では最終的な合意まで取り付けることができず、ISO の正規な策定手順にしたがって、事業継続の国際規格を1から策定することになったのだという。

 それを担当する専門的な組織として指定されたのが社会セキュリティ委員会TC223 だ。

 現在、TC223 には、WG 1からWG 5まで5つのワーキンググループがあり、民間企業の事業継続力だけでなく、公的機関も対象にした規格まで幅広く検討・開発が行われており、社会全体のセキュリティ向上を大きなミッションに掲げている。

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被災地で役立った情報とその伝達手段

2012/04/16 19:59 に 中澤幸介 が投稿   [ 2012/04/16 20:05 に更新しました ]

被災地で役立った情報とその伝達手段

東日本大震災における被災者の情報ニーズとメディア利用行動

寄稿 メディアアナリスト 井坂公明


東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県の被災地では、被災者の立場からみてどのような段階で、どのような情報が求められ、どのような伝達手段(メディア)が役立ったのか─。

 日本民間放送連盟・研究所が昨年実施した「東日本大震災時のメディアの役割に関する総合調査」を手掛かりに、被災者の情報ニーズとメディア利用の実態を分析した。それによると、震災発生時・直後には緊急地震速報や大津波警報などの防災情報が必要とされ、緊急地震速報の周知には防災無線と携帯・パソコン(PC)が、大津波警報の周知には防災無線とラジオが大きな役割を果たした。大津波警報については、防災無線が機能した地域と、そうでない地域に明確な差が見られた。また、全体的に携帯やインターネットなどの通信系メディアは、地震や津波による停電や断線、中継基地局の被災が原因で、1週間後ごろまでは貢献度が低い傾向にあったことも判明した。

 民放連の調査は「被災地受け手調査」と「被災地送り手(メディア事業者)調査」で構成、2011 年7月から10 月にかけて実施された。本稿では、受け手調査の内容を紹介する。

◇発生時の所在地は自宅と職場・学校が8割
 まず、11 年3月11 日14 時46 分ごろの地震発生時の所在地は、被災の程度が比較的重かった人が対象となっている仮設調査では、「自宅」が55.0%と最も多く、次いで「職場・学校」24.4%、「職場・学校以外の屋内」8.2%、「移動中」5.6%、「屋外」5.2%の順。被災程度が比較的軽かった人が対象のネット調査では「職場・学校」39.6%、「自宅」38.5%、「職場・学校以外の屋内」7.3%、「移動中」6.6%、「屋外」3.2%だった。どちらも「自宅」と「職場・学校」を合わせると約8割に上った点が共通している。

 緊急地震速報の認知率(「聞いた」との回答)は、仮設調査で40.6%、ネット調査で38.0%とほぼ同水準。地震速報を聞いたメディア・情報源は、仮設調査では「防災無線」と「携帯電話・PC」がそれぞれ35.5%でトップ。以下「ラジオ(カーラジオを含む)」17.7%、「テレビ(ワンセグ、車載テレビを含む)」16.7%など。一方、ネット調査では「携帯・PC」が74.6%で断然1位。次いで「テレビ」19.0%、「ラジオ」9.9%、「防災無線」6.3%などの順だった。

◇大津波警報の認知率は防災無線が左右
 大津波警報の認知率は、仮設調査では57.0%、ネット調査では39.8%にとどまった。今後認知率をどう引き上げていくかが大きな課題の1つとなろう。大津波警報を聞いたメディア・情報源は、仮設調査では「防災無線」が49.5%と約半数を占めた。次いで「ラジオ」21.4%、「(家族や隣人などからの)口コミ」15.1%、「自治体などによる広報車、口頭での呼び掛け」13.7%の順。ネット調査では「ラジオ」40.0%、「テレビ」38.9%、「防災無線」27.8%、「自治体などによる広報車、口頭での呼び掛け」12.5%の順だった。

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数日前に地震を予知

2012/04/15 18:05 に 中澤幸介 が投稿   [ 2012/04/15 18:09 に更新しました ]

数日前に地震を予知

BCP や防災訓練にも有効


インタビュー早川正士氏電気通信大学名誉教授

「数週間、数日前に一定規模以上の地震が来ることがわかる」電気通信大学名誉教授の早川正士氏は、これまで長年、続けてきた電磁気的手法による地震予知の実用化に踏み切った。既に携帯電話事業者とも連携し、1月末から市民向けの配信も行う。東日本大震災は、地震予知の難しさを改めて浮き彫りにしたが、こうした短期の予知情報を行政や企業が利用すれば、被災時の心構えが日常的に身に付き、訓練としての効果も期待できそうだ。早川教授に地震予知の可能性と現時点の精度について聞いた。


 地震予知は、長期、中期、短期に大別されますが、このうち、長期、中期というのは数十年、あるいは数年の間に、いつ、どこで、どのくらいの地震が、何パーセントぐらいの確率で起きるかを予測するというものです。これに対し、短期予知というのは地震の数日から数週間前に、地震の発生を予知します。私は、この短期予知こそが、最終的に市民の生命や財産を救う重要な手段になると信じています。なぜなら、地震が発生することが数日前に分かれば、防災では手が回せなかった、さまざまな対策も可能となり、被害を最小限にとどめることができるからです。

 地震予知学は、地震発生のメカニズムを解明する地震学とはまったく異なり、地震の前兆となる現象を探した上で、地震との因果関係を検証するもので、極端な話、地震雲やナマズの行動なども含まれます。ただし、科学的な因果関係を証明する必要があります。私が研究しているのは電磁気的手法というもので、電気、磁気などの異変を捉えて地震を予知します。

 例えば、プラスチックの下敷きをゆっくりと折り曲げていくと、最後のところでバチッと割れますが、割れる手前のところで必ず細かなひびが入ります。地震でも、本震の1週間ほど前からこのような現象が起きていると考えられるわけですが、この時、岩が割れたり、断層にヒビが入ることで摩擦電気などにより電荷(電流)が発生することが確認されています。また、地上から80 キロメートルほど上空にある電離層という電波を反射する大気層が、そのような地下の変化に対応して乱れることも分かってきています。

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クライシスマネジメントの新規格PAS200

2012/04/08 17:45 に Kosuke Nakazawa が投稿   [ 2012/04/08 17:54 に更新しました ]

クライシスマネジメントの新規格PAS200
-ガイダンスおよびグッドプラクティス-


英国規格協会が新たなクライシスマネジメント(危機管理)の規格「PAS200」を発行した。社会不安、従業員の死亡、産業スパイ、自然災害などの予期せぬ緊急事態に企業の経営が速やかに対処できるよう、情報収集・意思決定に必要な枠組みや、危機管理力を向上させるマネジメント手法などについて示している。BSI グループジャパンの米澤寿員氏に解説していたただいた。


1.概略
■ BCM とクライシスマネジメントの違い
 日本は2011 年3 月11 日に発生した東日本大震災で、未曾有の被害を受けました。これは、地震、津波、
原子力発電所の被災、停電といった複数の災害により、想定をはるかに超える大規模なクライシスが発
生したからです。 また、最近のクライシスに関する事例としては、企業の損出隠しにより株価が大幅に下落し、上場廃止の危機に陥った例や、あるいは、タイにおける大洪水により、生産拠点を持つ製造業が、長期化する操業停止により大きな損害を受けている例も挙げられます。

 このガイダンスは、私たちが東日本大震災で経験したような複数のクライシス(地震/津波/原子力発電所の事故/計画停電)や、その他の想定が困難な様々なクライシスに対して、トップマネジメントがいかに現状を把握し、対応の意思決定をして、実際に対応すればいいかを示したガイダンスです。

 BCM(事業継続マネジメント)は、想定リスクに対して事前に準備を行い、インシデント(事件・事故)が発生した際、あらかじめ演習を実施して確認された手順に従い対応を行うことで、主要な製品やサービス、組織の評判を守りますが、クライシスマネジメントは組織の想定をはるかに超えた規模のクライシスに対して、組織の経営層がいかに迅速・正確に情報を収集・分析、意思決定をして対処するかを確立する仕組みです。

 このガイドラインにより、組織は、 
 ●クライシスの本質の理解
 ●クライシスマネジメント能力の開発
 ●クライシスへの対応と復旧の計画及び準備の実施
 ●クライシス時のコミュニケーション
 ●クライシスマネジメント能力の評価
といった形でクライシス発生時の対応を確立させ、全体のプロセスを演習により確認し、評価する仕組みを理解、実践することが可能となります。

 このガイダンスは、BCM を補完するものでもあり、BCM と組み合わせて使うことで一層、効果的になります。クライシスは元来、予測が非常に困難で、その対応方法には柔軟性が求められますが、PAS200 はこの課題を解決するソリューションを提供しています。


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世界が注目するキューバの防災

2012/04/05 7:12 に 中澤幸介 が投稿   [ 2012/04/05 7:14 に更新しました ]

世界が注目するキューバの防災
相次ぐハリケーンから国民を守る

 キューバは、世界で最も多くのハリケーンが襲来する地域の1つとして知られる。首都ハバナが水没するなど、これまで幾度となく壊滅的な被害を受けてきた。しかし、死者の数は驚くほど少ない。意外なことだが、キューバは国連や赤十字をはじめ、欧米諸国からも防災モデル国として注目されている。「『防災大国』キューバに世界が注目するわけ」(築地書館)の共著者の一人、吉田太郎氏に話を聞いた。


 ハリケーンは、襲来した地域に壊滅的な被害をもたらし、住宅や公共施設はもちろん、数多くの人命も奪う。2005 年にアメリカ南東部を襲った大型ハリケーン・カトリーナは、死者1836 人、行方不明者705 人に及び、今日まで、アメリカで最も多くの人命を奪った自然災害の1つと言われる。

 キューバが位置するカリブ海周辺地域は、ハリケーンのメッカとして知られ、1996 年から2005 年の10 年にかけて、8回に及ぶハリケーンに見舞われ、うち、4 回はカトリーナと同規模の、あるいはそ れを凌ぐ大型のハリケーンが襲来した。とくに、2000年以降からは、ほぼ毎年のようにハリケーンに襲われている。しかし、キューバのハリケーン被害における死傷者は極めて少ない。例えば、2004 年のハリケーン・チャーリー(カテゴリー3)では、アメリカのフロリダ州で30 人が命を落としたが、キューバでは死者数はわずか4人だった。2008 年のハリケーン・グスタフ(カテゴリー4)でもアメリカやハイチでは多くの死者が出たにも関わらず、キューバでは皆無だった。
こうした実績から、国連や赤十字、さらには社会主義国であるキューバに対して経済封鎖を行っているアメリカまでもが、防災のモデル国としてキューバを注目している。


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東日本大震災における行政の危機対応

2012/04/01 18:17 に Kosuke Nakazawa が投稿   [ 2012/04/05 7:14 に 中澤幸介 さんが更新しました ]

東日本大震災における行政の危機対応

【特別寄稿】
京都大学防災研究所 准教授 牧 紀男

東日本大震災では、自衛隊や消防、警察などが迅速な対応を見せる一方で、基礎的自治体であ る市町村の庁舎や職員が被災するなど、行政 機関の対応は明暗が分かれた。各機関の調整 にあたった都道府県の災害対策本部ではどの ような対応がとられ、何が課題として浮かびあ がったのか。京都大学准教授の牧紀男氏に特別 寄稿いただいた。


「緊急災害対策本部」の設置
 2011年3月11日に発生した東日本大震災では1961年の災害対策基本法の制定以来はじめて国の危機対応組織としては最上位にあたる内閣総理大臣を本部長とする「緊急災害対策本部」が設置された。あまり知られていないが1995年の阪神・淡路大震災では災害対策基本法に基づく組織としては「非常災害対策本部」が設置されただけであり、「緊急災害対策本部」は設置されていない。その代わりに、準ずるものとして「緊急対策本部」(災害が入っていない)が設置された。これは阪神・淡路大震災当時は、経済統制等を伴う「災害緊急事態の布告」が「緊急災害対策本部」設置の条件となっており、さらに「災害緊急事態の布告」には国会の承認が必要であり、設置が難しかったことがその理由として上げられる。

 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、災害対策基本法の改正が行われ「災害緊急事態の布告」を行わなくても「緊急災害対策本部」を設置することが可能になり、また「現地災害対策本部」の設置についての規定も設けられた。今回は「緊急災害対策本部」が設置されると共に、宮城県に災害対策基本法に基づき内閣府副大臣をトップとする「現地災害対策本部」、岩手県、福島県に「政府現地連絡対策室」が設置された。東日本大震災の対応では、阪神・淡路大震災後に設置された緊急対応組織である自衛隊の災害派遣、緊急消防援助隊、災害派遣医療チーム(DMAT)、広域緊急援助隊(警察)といった組織も発動され、災害直後から活動が行われた。このように初動の立ち上げという面では阪神・淡路大震災の教訓は活かされたと言える。

災害対策本部の設置と危機管理機能の喪失
 災害発生が執務時間中であったこともあり、各自治体では迅速に災害対策本部が設置された。都道府県レベルでは表1に示す通り23の都道府県で災害対策本部が設置された。災害対策本部は、強い揺れに見舞われた東北・北関東地域だけでなく津波の被害が予想された徳島・高知といった四国の自治体で設置された。また3月12日に長野県、3月15日に静岡県で災害対策本部が設置されたのは、その後に発生した地震に伴うものである。

 阪神・淡路大震災と異なり県庁が激甚被災地に立地するということは無く、さらに執務時間中の災害であったため災害対応組織の立ち上げは迅速に行われた。しかしながら、福島県庁のように県庁の建物自体の安全性の確認がとれないため別の建物に災害対策本部を設置したような事例も存在する。

 その一方で岩手県・宮城県の沿岸部の市町村では災害対応の核となる市役所庁舎・災害対策庁舎が津波による被害を受けて使えないという事態が発生した。宮城県の南三陸町では災害対策棟が津波により壊滅的な被害を受け、職員が亡くなるという事態も発生した。岩手県では陸前高田市、大槌町で市役所の庁舎が津波で全損し、別の施設で災害対応業務が行われ、釜石市でも津波浸水域にある市庁舎ではなく、内陸部にある施設に災害対策本部が設置された。役場が壊滅的な被害を受けた岩手県の大槌町では災害対応の核となるべき町長が津波で命を失うという事態も発生し、市町村レベルでは災害対応組織の立ち上げに大きな問題が発生した。また、災害発生直後は、津波により通信線が物理的に切断されたため、市町村と県との間の通信が衛星回線を利用した通信網以外は利用できないという問題も発生した。

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危機発生時における状況判断

2012/03/31 21:05 に Kosuke Nakazawa が投稿   [ 2012/04/05 7:15 に 中澤幸介 さんが更新しました ]

隠れた情報を無抜く力

危機発生時における状況判断


危機発生時においては、指揮者の迅速で的確な状況判断が求められる。特に消防などの第一線では、その判断1つで地域全体の明暗を分けることもある。東日本大震災で緊急消防援助隊東京都隊の指揮にあたった前東京消防庁警防部長の佐藤康雄氏と、前東京都総務局総合防災部情報統括課長の齋藤實氏に話をうかがった。



司会 東日本大震災の対応においては、様々な場面で難しい判断をされてきたと思いますが、今、振り返ってみて特に印象に残っているのはどのような時ですか。

佐藤氏 東京都内の被災状況の全体像がつかめない中、地震発災から50 分後に総務省消防庁長官から東北への緊急消防援助隊の派遣要請が入り、その派遣体制をどう整えるかが、発災直後の喫緊、かつ、重要な判断の1つでした。
 一番心配したのは、東京も震度5強の被災地であるということです。発災直後に入ってきた災害情報への対応は勿論大切ですが、あまりに被害がひどいがために、その災害情報を伝えられない地域があるのではないかということを常に念頭においていました。阪神淡路大震災でも、被害が大きなところほど情報が伝わりにくい状況がありました。そうした隠れた情報を見逃さないようにしないと判断を誤ると考えていました。

齋藤氏 注意しなければならないのは、最初に来る情報は、連絡手段が確保されている被害が少ない地域の情報で、最も被害が大きいところの情報は遅れてくることです。最初の情報は氷山の一角といってよく、そこにこだわりすぎてはいけない。大規模災害のときには、情報を受ける側が、多数の情報が次々に入ってくることを考慮しておかなければなりません。

司会 災害発生後、次々と入ってくる情報に判断が鈍ることはないのですか。

佐藤氏 1つとして同じ災害はありません。その場の状況をよく見定めて判断することが肝要です。震災のような広域災害では、はじめの情報で即応しないと危ないこともありますが、手持ちの限られた戦力をいかに有効に使うかが最重要課題となります。そのためにも多くの情報をキャッチすることが必要で、東京消防庁ではヘリを飛ばすなど被害の全体像をつかむことに努め、そのうえで1時間半後に東北への援助隊派遣につなげることができました。かなり早い対応ができたと思います。
 これには、昨年11 月に実施した関東ブロック緊急消防援助隊訓練の際に、全署員の情報に対する感度を徹底的に高めていたことが大きく寄与しました。どの情報を取り上げて流すべきか、といった重要情報のトリアージを全職員の共通認識にまで高める訓練ができていたのです。

齋藤氏 情報の「トリアージ」が何より重要です。情報を収集するだけならば早さだけが問われますが、その中には緊急性の要するものや再確認しなければならないものなど、様々な情報が含まれています。どの情報を取り上げるかということを、各機関の担当者が理解していないと難しいのです。
 また、それらを踏まえて訓練をしておく必要があります。東京都の総合防災部は、都全体として被害状況をまとめることが最重要ですから、そうした情報の判別態勢を整えています。


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隊員の安全確保と消防の使命

2012/03/30 22:09 に Kosuke Nakazawa が投稿   [ 2012/04/23 19:09 に更新しました ]

隊員の安全確保と消防の使命


災害スペシャリストが振り返る石油コンビナート火災の消火から、
福島第一原発冷却までの戦い。

 
前緊急消防援助隊東京都隊総隊長 
佐藤康雄氏に聞く

阪神淡路大震災と比べ大幅に向上した災害対応の1つに消防機関の活動が挙げられる。平成7年度に創設された緊急消防援助隊には平成22 年4月時点で全国4264 隊が登録されており、東日本大震災では、発災直後から全国の緊急消防援助隊が迅速に被災地に入り、人命救助活動などに当たった。東京消防庁では、都内の災害対応や、千葉・静岡などへの応援部隊の派遣に追われる中、緊急消防援助隊を東北方面に出動させ、さらに福島第一原発の冷却作業にもあたるなど大きな任務を果たした。緊急消防援助隊の東京都隊総隊長を務め、3月31 日に東京消防庁を退職した佐藤康雄前警防部長に東日本大震災発生後の東京消防庁の対応と、総隊長としての任務について振り返っていただいた。


 東京消防庁の震災対応は2月22 日のニュージーランドで発生したクライストチャーチ地震の時から始まっていた。東京消防庁では、国際緊急援助隊を第3 次隊まで派遣し、3月12 日にはその最後の部隊が日本へ帰ってくることになっていた。

 3月11 日、佐藤氏は、庁舎の自室で、クライストチャーチ地震以降、慌ただしく仕事に追われた2週間を振り返りながら、派遣隊の帰国を迎える準備をしていた。その矢先、東日本大震災が発生した。

 庁舎の3階にある佐藤氏のいた警防部長室も大きく揺れた。初期の情報では、マグニチュードが7.9ということだったが、それが時間を追うごとに引き上げられ、正確な情報がつかみ難い状況が続いた。確実に分かっていたことは宮城県で震度7の被害があったということ。佐藤氏は「東北がかなりやられたという認識だけは発災直後から持っていた」と振り返る。

 発災から50 分後、総務省消防庁長官から東京消防庁に対し、緊急消防援助隊を東北に派遣するよう要請があった。

 しかし、東京もかなりの被害を受けていて、すぐに応援を派遣できるような状況ではなかった。
 都内では地震による火災が34 件発生。119 番通報も急激に増えた。平日なら1日で2800 件程度の119 番通報があるのが、この日は1日に1万件を超えた。都内では千代田区の九段会館で天井が落下し、町田市小山ヶ丘では大型駐車場のスロープが崩壊し老夫婦の車が挟まれるなど、5件の救助出動があった。このほか、緊急確認が必要なものが42 件あり、最終的に7人が命を落とした。

 これほどの被害の中で、応援部隊を派遣してしまっていいのか、佐藤氏は、「判断は難しかった」と打ち明ける。

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