国際規格で組織は強くなる
危機管理の国際規格が相次いで発行される。ISO(国際標準化機構)では、TC223(社会セキュリティ)という専門委員会が中心となって昨年11 月にISO22320(危機管理-危機対応に関する要求事項)を発行した。今年7月~8月には、事故や災害時における企業の事業継続を達成させるための、日常的な事業継続マネジメントのあり方をまとめたISO22301(事業継続マネジメントシステム)も誕生する。 東日本大震災や昨年7月末のタイの大洪水では、被災した企業だけでなく、直接被災していない企業でもサプライチェーンが途絶し、一部製品の製造が止まるなど世界的な影響を招いた。今後、国内外のサプライチェーンと連携する上で、こうした危機管理に関する国際規格への取り組みが、災害対策に関する共通言語として求められる可能性は十分ある。日本の組織はどう国際規格に向き合っていけばいいのか?規格誕生の背景から、概要、最新の開発動向までをまとめた。
品質マネジメントシステム(ISO9000 シリーズ)や環境マネジメントシステム(ISO14000 シリーズ)などで、すでに国内でも馴染みが深いISO 規格。発行するのは、民間の非政府組織であるISO(国際標準化機構:本部スイス ジュネーヴ)だ。同組織では、電気分野を除く工業分野について、国際的な標準である国際規格(IS)を策定している(電気分野についてはIEC:国際電気標準会議が国際規格を開発)。その危機管理に関する規格が昨年末から量産体制に入った。
先陣を切ったのは昨年11 月に発行されたISO22320(危機管理-危機対応に関する要求事項)。今年7月~ 8 月には、事業継続マネジメントシステム(BCMS)規格のISO22301 も誕生する。このほかにも、官民連携、演習・テスト演習・テスト、用語、緊急事態における集団避難など、10 以上の規格開発が進行中だ。
そもそもISO では、主要な産業分野の標準化を、TC(Technical Committee)と呼ばれる専門委員会の下で行っている。TC 1(ネジ)やTC 2(ボルト・ナット類) からTC 229(ナノテクノロジー)までがあり、危機管理はTC223(社会セキュリティ)が担当している。
TC223 の出発は、2001 年9月11 日に米国で発生した同時多発テロまでさかのぼる。9.11 以降、テロ対策や、あらゆる災害への対策を強化していた米国では、国家や自治体などの組織体系を見直すとともに、民間部門の危機対応力を高めるための仕組みとして、国際標準化機構(ISO)に対して、災害対応力の向上に関する国際規格を開発することを呼びかけた。米国内で発生するテロや災害だけでなく、ビジネスがグローバル化した現在では、国際的な危機対応力を向上させないと、米国だけではそれを達成できないためだ。
米国の働きかけを受け、ISO では2006 年4月に伊フィレンツェで災害対応力向上の国際規格を実現するための国際ワークショップ協定IWA(International Workshop Agreement)にもとづく会議を開催し、そこで米国規格協会(ANSI)が暫定規格を作ることを提案した。ちょうどこのころ、英国や日本、豪州やイスラエルでも、BCP の国内規格やガイドラインを作っていたことから、それぞれの参加国が規格やガイドラインを持ち寄り、国際規格の大きな枠組みについて議論した。ちなみに、日本の内閣府が事業継続ガイドラインを策定したのは2005 年8月のことだ。
このIWA 会議に参加した東京海上日動リスクコンサルティングの岡部紳一氏によると、会議では最終的な合意まで取り付けることができず、ISO の正規な策定手順にしたがって、事業継続の国際規格を1から策定することになったのだという。
それを担当する専門的な組織として指定されたのが社会セキュリティ委員会TC223 だ。
現在、TC223 には、WG 1からWG 5まで5つのワーキンググループがあり、民間企業の事業継続力だけでなく、公的機関も対象にした規格まで幅広く検討・開発が行われており、社会全体のセキュリティ向上を大きなミッションに掲げている。
続きは電子ブック誌面で<リスク対策.com 2012年1月号より>
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