2015年グローバルリスク予測

有限責任監査法人トーマツのリスクマネジメントに関する調査・研究組織であるトーマツ企業リスク研究所は1月7日、2015年のグローバルリスク予測を発表した。同研究所主席研究員の茂木寿氏は「現在の世界人口は70億人を突破。人口増により新しい都市が増えた分、必然的に自然災害も増加する。グローバル化による感染症拡大の可能性も高い」と話す。

2015年以降、予測されるグローバルリスクは以下の通り。

1. 自然災害の増加
自然災害は人間に影響を与える災害であることから、世界的な人口増加傾向、都市化傾向に伴い増加する。特に新興国では内陸部から沿岸部へ人口が移動し、都市化の進行が顕著になった。急激な都市開発の進展に伴い、河口地域の水はけが悪化。内水型洪水などのリスクが大幅に拡大している。

2. 感染症の拡大
現在、世界で1日に飛行機で移動する人口は1000万人とも言われる。世界的に衛生状況は改善されているものの、人口増やグローバル化に伴い感染経路、宿主要因も多様化している。また、ウイルスも日々進化するため、世界的な感染症リスクの顕在化は不可避と予測する。

3. 世界情勢の不安定化
国際政治は世界的なリーダー不在、国連・NATOなどの国際機関の機能不全により、地域紛争やテロなどが増加する。経済的には、グローバル化の進行で一地域の経済問題が世界的に波及する可能性が高く、景気、相場の乱高下の頻度が増加するほか、世界経済のけん引役であったBRICsの成長が頭打ちとなり、世界経済全体の不透明感が拡大する。

 4. 格差の拡大に伴う社会の不安定化
グローバル化の進展に伴う格差の拡大が社会を不安定化させる大きな要因となる。ジニ係数(社会における所得分配の不平等さを測る指標)が0.4を超えると社会が不安定化するとされているが、新興国の多くが0.4を超えている。

5.過激なイスラム原理主義テロ組織によるテロの増加
イスラム圏でもグローバル化の進展により、格差が拡大している。格差の拡大はイスラム社会の不安定化を招き、過激なイスラム原理主義の活動を活発化させる要因となる。また、ICT(情報通信技術)の発達に伴いテロ組織の活動も多様化。ホームグロウン・テロリスト*が拡大すると予測する。

*西側欧米諸国内などで、国内での居住歴が十分にあり、イスラム過激派メンバーではないものの、その過激思想に共鳴して、それら過激派と同様の方向性のテロ行為を、国内で独自活動として引き起こすことを示す。ロンドン同時爆破事件やボストンマラソン爆弾テロ事件もホームグロウン・テロとされる。2006年にはカナダで、移民第二世代の若者が、イスラム過激派思想に共鳴し、テロ計画を企て逮捕に至った。(出典:Wikipedia)

6. テロ組織の更なる多様化
過激な環境保護団体・動物愛護団体などのエコ・テロリストもさらに活動を活発化、過激化させると予測している。ICTの発達により、一般市民からの団体への寄付が増加していることも一因に挙げられる。日本企業も多く狙われていると予想される。

7. 中国情勢・朝鮮半島情勢の流動化
香港でのデモ拡大や、台湾国民党の馬英九総統の辞任など、中国情勢を取り巻く環境が変化している。中国政府は2014年の経済成長率を7.5%から7%に下方修正するなど、経済状況も不安化している。北朝鮮は国際的な関心を喚起するため、何らかの行動を起こす可能性が拡大している。

8. 商品相場の下落・低価格安定
これまで需給バランスに基づかず、高値で推移していた原油市場・金相場・穀物相場が下落傾向にある。2015年は商品市場全般が需給バランスを基にした市況になると予測される。石油収入に大きく依存する国の不安定化が予想されるほか、経済制裁下にあるロシアは原油価格、穀物相場の下落により何らかの行動を起こす可能性が高まっている。

9. 資源問題の深刻化
水問題が深刻化を増している。特に新興国では顕在化しており、水源・水利などの問題により地域紛争が増加すると予測される。

10. ICT進展に伴う問題の拡大
ICTの急激な進展に伴い、2015年も風評・デマの流布が増加する。サイバーテロによる重要インフラの停止や重要情報の漏えいリスクなどが高まる。

11. グローバルビジネス環境の急激な変化
米国および英国における外国公務員に対する贈賄禁止に関する法律(FCPA・UKBA)のほか、カルテルの問題についても各政府が積極的に摘発を進めており、その傾向は拡大する。カルテル問題は新興国政府にも摘発する姿勢を見せており、日本企業の摘発が大幅に増加する可能性も高い。