高い耐震率で被害防いだ

宮城県大崎市にある古川ガスは、東日本大震災で震度6強の揺れに見舞われながらも、都市ガスの供給をし続けた。1978 年の宮城沖地震以降、プラントや配管の耐震性を高めてきたことから大きなガス漏れがほとんど発生せず、かつ、地震発生後に職員一人一人が管轄地域を速やかに合理的に点検したことで二次災害の危険を排除した。



同社のガスプラントは、震度7クラスの地震でも耐えられる耐震構造を採用している。配管材は耐震性の高いものを使用し、中でもポリエチレン(PE)管の普及率は46.0% と、全国トップクラスを誇る。ガスの保安確保に対しては、平成元年と平成12 年に通商産業大臣より表彰された。1978 年の宮城沖地震でガス製造プラントそのものが被災し、長期間にわたり供給を止めた苦い経験から、全社をあげて震災対策に取り組んできた。

普通、都市ガス各社は、独自の地震計(SI 計)を設置しており、SI値で60 カイン(震度6 弱~ 6 強程度)を上回る地震が発生した場合
は、ブロックごと緊急遮断弁を遠隔操作で遮断し、ガス供給を停止することになっている。ただし、60 カインを多少上回っても、ガスの流量に大きな変動がなく安全が確認できればガスの供給が続けられる。

同社では、3月11 日の地震発生後、即座に流量計を確認。大きなガス漏れは無いと判断し、ガスの供給を止めなかった。それでも、倒壊家屋などの場所から、少量のガス漏れが発生している可能性があるため、即座に職員がパトロールを実施。10 平方キロぐらいの狭いエリアに加え、日ごろから自社でメーター検針を行っていることもあり、速やかに安全確認ができたという。

写真を拡大大崎市にある古川ガス

供給区域の中には、多少のガス漏れはあったが、「職員一人一人が、五感と、お客様から寄せられた情報に基づき、拠点ごとガバナーを閉めるなど、合理的に判断し動けたことで供給を続けられた」(千坂宏総務部長)とする。

大きな地震では、余震でガス管が被災するケースもあるようだが「一度安全確認して大丈夫な箇所でも後からフォローするなどの社内体制がうまくいった」(同)。

同社は2008 年6月14 日に発生した岩手宮城沖地震以降、毎年6月12 日に防災訓練を実施してきた。今回の震災対応についても「訓
練通り動けたことが何より大きい」としている。