2018/10/09
北海道胆振東部地震と相次ぐ台風
安全のため鉄道を止め、集客施設は休業
近畿地方の鉄道は始発より運転したが、大阪環状線、阪和線、おおさか東線、大和路線他、JR西日本全線およびほぼすべての私鉄が4日午前中までに運転を中止した。地下鉄についても地上区間のある路線などが運転見合わせとなった。本数を減らして運行していた東海道新幹線は、4日午後2時ごろから東京駅~新大阪駅間の全線で運転を見合わせた。映画館などの施設、百貨店では、終日休業とした。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)では、4日の終日休業に続き、園内整備のため5日についても終日休業を発表した。
これらの判断は素晴らしかったと思う。これまで日本の交通機関はどのようなことがあっても運行を止めず、列車を走らせ続けることが称賛を浴びてきた。まさに職員の犠牲的精神で交通機関の運行を確保することこそが目標となってしまっていたのだ。しかし、2012年アメリカに来襲したハリケーン・サンディの際に、ニューヨーク都市交通公社(MTA)は上陸の前日夕方までに地域内すべての地下鉄とバスの運行を停止した。このため1日540万人の利用に影響し、地下鉄トンネル(8本)、地下鉄駅(8駅)、道路トンネル(2本)に海水が流入したが、地下鉄構内で犠牲者は出ていない。
このことから学ぶべきことは、鉄道が動き続け店が開いていれば、市民は活動し続けるということである。鉄道が運行し続ければ、命を失う危険性が格段に増大するということを考えると、今回の近畿の鉄道各社が運転を止め、USJや百貨店が休業したことは、勇気ある正しい判断で、このことをもって称賛されるべきである。
雨が降り始めてからの避難情報は遅すぎる
現在の避難に関する各情報は雨が降り始めてから一定時間が経過し、河川に雨水が集まり始めてから、避難判断を始めるという手順になっている。逆に考えると雨が降らない限り、台風が近づいてきても、ゲリラ豪雨が迫っていても、避難に関する情報は発令されない基準になっているのである。雨が降り始めない限り避難情報が発令されないと言うことは、情報を受け取る住民のサイドからどのような時にどのような段階でどのような指示が出れば「命を犠牲」にすることなく、逃げきれるかという視点が欠けているのではないだろうか。雨が降り始めてからの避難情報では遅すぎるのだ。
(了)
北海道胆振東部地震と相次ぐ台風の他の記事
- 自宅離れられない被災農家に個別仮設
- 代替電源機能せず、現金の信頼性再認識
- 台風21号、停電数最悪「阪神」より復旧日数
- 【第1回】平成30年の相次ぐ災害から見えたもの
- 台風時、雨が降り始めてからの避難情報では遅すぎる
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方