JR西日本は台風21号で早々の運休を決めた

安全のため鉄道を止め、集客施設は休業

近畿地方の鉄道は始発より運転したが、大阪環状線、阪和線、おおさか東線、大和路線他、JR西日本全線およびほぼすべての私鉄が4日午前中までに運転を中止した。地下鉄についても地上区間のある路線などが運転見合わせとなった。本数を減らして運行していた東海道新幹線は、4日午後2時ごろから東京駅~新大阪駅間の全線で運転を見合わせた。映画館などの施設、百貨店では、終日休業とした。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)では、4日の終日休業に続き、園内整備のため5日についても終日休業を発表した。

これらの判断は素晴らしかったと思う。これまで日本の交通機関はどのようなことがあっても運行を止めず、列車を走らせ続けることが称賛を浴びてきた。まさに職員の犠牲的精神で交通機関の運行を確保することこそが目標となってしまっていたのだ。しかし、2012年アメリカに来襲したハリケーン・サンディの際に、ニューヨーク都市交通公社(MTA)は上陸の前日夕方までに地域内すべての地下鉄とバスの運行を停止した。このため1日540万人の利用に影響し、地下鉄トンネル(8本)、地下鉄駅(8駅)、道路トンネル(2本)に海水が流入したが、地下鉄構内で犠牲者は出ていない。

このことから学ぶべきことは、鉄道が動き続け店が開いていれば、市民は活動し続けるということである。鉄道が運行し続ければ、命を失う危険性が格段に増大するということを考えると、今回の近畿の鉄道各社が運転を止め、USJや百貨店が休業したことは、勇気ある正しい判断で、このことをもって称賛されるべきである。

写真を拡大 川の水位変化と危険性(提供:土屋氏)

雨が降り始めてからの避難情報は遅すぎる

現在の避難に関する各情報は雨が降り始めてから一定時間が経過し、河川に雨水が集まり始めてから、避難判断を始めるという手順になっている。逆に考えると雨が降らない限り、台風が近づいてきても、ゲリラ豪雨が迫っていても、避難に関する情報は発令されない基準になっているのである。雨が降り始めない限り避難情報が発令されないと言うことは、情報を受け取る住民のサイドからどのような時にどのような段階でどのような指示が出れば「命を犠牲」にすることなく、逃げきれるかという視点が欠けているのではないだろうか。雨が降り始めてからの避難情報では遅すぎるのだ。

(了)