ICS を生かしたリスク管理 市民団体や NPO が一緒になって 「新しい公共」の実現を目指して活動している「新しい公共をつくる市民キャビネット」のスマート ICT 部会(後藤真太郎部会長・立正大学 地球環境科学部教授) は9月 11 日、 東京・港区エコプラザで「これから のリスク管理を語ろう∼災害情報を シェアするしくみについて考える」と題したセミナーを開催した。 「新しい公共フォーラム」として シリーズ開催されている一環で今回は第9回。在日米陸軍消防本部統合消防次長の熊丸由布治氏が「もし 東京電力が ICS を採用していたら」 をテーマに、また独立行政法人海上災害防止センター防災部長の萩原貴 浩氏が「海上災害に ICS を活かす」 をテーマにそれぞれ講演。後藤真太 郎部会長の進行によるパネルディスカッションも行われた。 ICS とは、米国で開発された災 害現場・事件現場などにおける危機 対応の標準化されたマネジメント・ システム。米国防総省の管轄下で任 務に就いている熊丸氏は、東日本大 震災からの教訓は①標準化された災 害対応管理制度の不在、②訓練プログラムの不在−の2つであると指摘し、災害対策本部運営のノウハウが統一されておらず、各組織が設置した対策本部をそれぞれのルールで運営したことで調整が難しく迅速な対 応に結び付かなったことや、ICS が導入されておらず指揮命令系統もあいまいだったこと、さらにはインターネットの普及に伴う情報の氾濫 が加わり風評被害など二次的な災難にも見舞われたことなどの問題点を挙げた。 熊丸氏は「訓練については、時々お祭りごとのように行うものではなく、体で覚え るほど繰り返し実施して身に付くものである」と強調。 ICS の利点については、各組織間でリソースと情報の縦断的および横断的な流れが確立でき、それにより迅速な動員、物資の流通と展開が可能になることから、必要最低限のコストで、あらゆる種類や規模のインシデントに効率的に対応可能な体制が提供できるとした。 民間海上防災の中核機関として有 害液体物質などの流出防除と火災消火活動を行う海上災害防止センターの萩原氏は、海上災害が起こった際には事故原因の追究や、今後の漁業 への影響など「問題の管理」と、どのようにオイルフェンスを展開する かといった具体的な防除活動の決定 など「事故の管理」 、それぞれのコ ンセンサスの確保が大切であるとした。 そのためには、力を合わせて頑張ろうなどの合言葉だけでなく、具体的にどのように対応するかが重要で、タテ割り行政に横串を指して、 共通ルールのもとに同じ方法で対応することが大切とした。 萩原氏はまた、危機管理では全てを守ることはできず、地域のガバナンスを効かしコンセンサスを得た上で、何を犠牲にして必ず守るべきものは何かを共通認識し、全体的な被害を極小化することが ICS の根本であると語った。 講演後のディスカッションでは、 後藤部会長が、各分野でそれぞれ行っている訓練を、地図を活用した 情報として共有することはできないだろうかと提案した。
写真を拡大海上災害防災センターの萩原氏
写真を拡大後藤部会長1
写真を拡大在日米軍消防本部の熊丸氏