2014/11/21
セミナー・イベント
BCP実効性を高める情報基盤とは?
TIS株式会社公共ソリューション推進部部長 林伸哉氏
危機管理調査から見えてきたもの
東日本大震災後に実施された、BCP対策状況などに関する各種調査結果では、8割以上の企業がBCPに関心があると回答。しかし必要性があると感じながら、取り組み方を理解している企業は2割程度に留まっています。また、BCPを策定していた企業に実施したアンケート結果では、震災の時の対応に関する評価は、78%が「概ね機能したが問題があった」といった状況でした。問題点は、津波や原発事故を伴う想定外の災害だったこと。そして、広域かつ長時間に及ぶ災害だったこと。その結果、BCPの想定シナリオが応用できなかったと報告しています。
このような状況の中、2013年8月に「事業継続ガイドライン」が改定されました。改定の背景、目的が書かれていますが、想定外の事象に対応するBCPを策定すること、サプライチェーンとの連携の重要性を考慮すること、経営者の関与とリーダーシップの発揮が大切ということが、この改訂版の要点だったと考えます。
こうした調査などをもとに考察すると、シナリオベースのBCPの策定が困難になっているのではないかと思われます。なぜなのか。想定外の想定が難しい、シナリオ通りの災害はない、全社での取り組みが難しい、BCPへの投資が進まない、そして、ちょうど良いシステムがない。つまり、BCP対策として用途が明確なシステムが安否確認しかなく、その後の対応がシナリオによるアナログ対応になっている。ここが、BCP対応が進まない原因になっているのではないかと考えています。
なぜ危機管理のシステム化が難しいのか
あらゆる災害を想定する危機管理システムは規模が大きく、莫大なコストがかかり、数億円かけたシステムが3年間稼働したことがないというケースもあるようです。また、シナリオベースで組まれたBCPをシステム化するのは不可能ということです。仕様が定まらないため、コストが膨らんだり費用対効果が低かったりして挫折してしまうのです。BCP対策をやりますかという時に、使うかどうかわからないものに高額投資できないという話もよく聞かれます。
どのようなシステムなら使っていただけるか
まず、災害対策が施されたクラウドシステムであること。自社にサーバを置いておいて、被災したら終わりという事態は起こりません。
次に、複雑な組織体でも情報共有が可能なシステムであること。例えば、サプライチェーンとのコミュニケーションも可能にする多様なグループ設定ができるというものです。
次に、刻々と変わっていく状況を時系列で把握できるシステム、あるいは、シナリオが変わっても対応できるシステム、平常時でも使えることでコストメリットを出せるシステムということになるのではないでしょうか。
こうしたことをまとめると、災害時の迅速な初動対応と情報共有を実現するには、「占有型クラウド」で「時系列管理」ができ「マルチデバイス」がベストであると思います。具体的には、次のような機能が盛り込まれていることが望まれます。
・災害発生時の警報、特別警報に連動した自動発報機能
・安否確認の状況が組織で共有できる
・時系列の情報管理が共有できる
・地図上で情報を共有できる
・通常でも使えるコミュニケーション機能がある
・サプライチェーンなどさまざまな組織に対応可能
災害、事故、内部不祥事など、あらゆる危機対応において、最も重要になるのが「情報共有」です。被害状況を正しく把握し、関係者間で情報を共有して、意思決定を迅速に行わなければなりません。平常時とは比較にならないほどの情報が行き交い、迅速な対応が求められる危機管理対応時だからこそ、このような情報共有システムが必要になるのです。
セミナー・イベントの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方