豊島区の繁華街、池袋駅東口付近(出典:写真AC)

東京都23区内の災害対策は多様です。それは、地形や過去の経験が様々だから。お住まいの地域の防災対策が「その区ならでは」のものになっていることをご存知ですか?まずは、住んでいるまちのことを知り、そのまちで安心して暮らすための対策を知る。その行動次第であなたの大切な人の命が救われるとしたら…?23区の「その区ならでは」をここで一挙にお伝えします!今回は、豊島区の第2回目です。

豊島区の生活再建支援メニューは50以上!

災害が起こったとき、豊島区には生活を立て直すための支援メニューはいくつあるかご存知でしょうか。

住家の被害を証明する「り災証明書」をはじめ、義援金や支援金の給付、仮設住宅への入居、税や保険料の減額など、実に50以上あります。

災害は、「起こったそのときに、どう生き延びるか」だけの問題ではありません。その後の生活をどんな手段で、いかにスムーズに、再建するか。豊島区が今、取り組んでいるのは、それらの支援制度を一覧化した「被災者生活再建支援メニューブック」の作成です。

このメニューブックは、り災証明書が発行されてから、区民が受けられる支援をまとめたもの。豊島区では、り災証明書の発行は発災後1カ月後からを予定しており、区民の生活再建のために各種手続きの説明の際に活用される冊子のようなものを想定しています。

「ただでさえ混乱する災害時に、住民のみなさんをさらに混乱させることがないように、全庁的に取り組む必要があります」と話すのは、保健福祉部福祉総務課 災害対策グループリーダーの大浦幹夫さん。大浦さんは2018年4月に新設された保健福祉部福祉総務課「災害対策グループ」でリーダーを務められています。

新設された「災害対応グループ」の主業務は、災害時要援護者への支援体制と福祉救援センターの環境整備ですが、災害時の生活再建のための相談や支援について考えることも。災害時に備え、福祉の視点を取り入れていくため、あえて保健福祉部内にチームが設けられました。いざという時に窓口対応がスムーズに行えるよう、訓練を通じて日頃から習慣のように業務に慣れておくことが大切です。

豊島区「地域保健福祉計画」に込めた熱い想いをお話してくださった大浦さん(写真撮影:葛西氏)

訓練でわかった災害時の大幅な職員不足!

なぜメニューブックなのか。災害時の住民サービスの向上はもちろんですが、大浦さんは「実は区役所にとっても必要なものなんです」と言います。災害時の混乱の中、職員もできるだけスムーズに業務を進めなければならないからです。

業務をできるだけ効率よく進めるため日々改善に取り組まれていますが、2018年9月、大浦さんは同じ災害対策グループの中野靖子さんと総合防災訓練(図上訓練)に参加しました。

総合防災訓練の受援班では、発災直後から職員が取り組む「非常時優先業務」について実際の動きの確認が行われました。そのときの気づきが衝撃だった、と中野さんは語ります。

「災害直後は国や他県市の応援に頼れない。発災後3日間は豊島区職員だけで対応する、という想定で訓練したところ、職員の参集率や業務に必要な人数を単純計算すると人員が全然足りなかったんです…」。中野さんたちはそこから、災害が起こったときの業務の効率化を本気で考え始めたと言います。

訓練で危機感を実感し、各部との連携を強める中野さん(写真撮影:葛西氏)

物資の配給、帰宅困難者の対応、再建メニューの整理、など災害時は整理すべき業務が山のようにあります。効率化を図ったとしても、現在の体制では足りないかもしれません。

「限られた人数で取り組むために今できることは、部署横断で対策を検討すること。より効率化できる方法はないか?多数の部署が一緒に何度も訓練を積んで考えてみることが大切」と中野さんは語ります。

人手不足は、災害時の司令塔となる総務部防災危機管理課でも深刻です。「今の体制では足りません」と、総務部防災危機管理課訓練計画グループリーダーの櫻井俊哉さんも話します。

総務部防災危機管理課は、現在30名体制。「30名でできることは限られています。私たちはもちろんですが、区役所全体がどう連携して、いざというときに適切に動けるか、もっと意識を高める必要があります」と気を引き締めます。

「それに…」と櫻井さんは続けます。

「『起こったときにどうするか』という意識だけでは、実は足りません。日々の業務をやる中で、いざというときに備える力を常に蓄えておく必要があります。その意味では、日々の業務そのものが防災対策にもなっているか、がなければいけません」(櫻井さん)。