丸山氏は建物のみでなく住民の高齢化がマンションに及ぼすリスクについて語った

大和ハウス工業グループのマンション管理会社である大和ライフネクストは、マンションの建物と住民の高齢化リスクをテーマにした「-築30年からの-あなたのマンションの将来を設計する本」を11月に刊行。管理組合などに配布する。22日にはマンション管理士で同社ゼネラルマネージャーの丸山肇氏が東京都江東区の東京ビッグサイトで開催の「第2回 団地マンションリノベーション総合展」で講演した。

同書では日本のマンションが2030年には平均築年数が31.6年と30年を超えること、今から10年後には720万戸のうち半分弱の350万戸は築30年以上になるという、建物自体の高経年を指摘。また、住民も高齢化が進み、2025年には区分所有者の世帯主の71.2%は60歳以上になると見込んでいる。若い世代が入居せず、高齢の所有者が亡くなるなどして空き家が増えるといったリスクがあることを紹介している。

そのうえで長期修繕計画のほとんどが一回りする築30年をめどに、マンションの将来設計を考えるべきとしている。本格的な再生による長寿命化、建て替え、更地一括売却のいずれを目指すにせよ立地や解体コスト、建て替え時の容積率や価値向上といったマンションのポテンシャルと、合意形成などで必要なコミュニティのポテンシャルの重要性を説いている。また、建て替えや再生の成功事例も掲載している。

22日の講演で丸山氏は「住民が高齢化し、しかも永住志向が強まっている。そういった住民の死後、相続もされなかったら空き家となり管理費もとれないといった事態にもなる」と指摘。2016年にニッセイ基礎研究所が発表したマンションの空き家率において、東京都でも世田谷区が12.8%にのぼったことも紹介し、「人が住まないと建物の死にもつながる」と述べ、若い世代が入居し、次世代につないでいくことがマンションの持続可能性につながっていくとした。

そのためにも若い世代が住みたいと思える価値づくりの重要性を指摘。特に築30年を過ぎたら60年目も意識し、長寿命化、建て替え、更地の売却という選択について住民みんなで考えて、コミュニティのポテンシャルを引き出していく努力の必要性などを語った。建て替えについては区分所有者の5分の4、更地化して売却は被災マンション法適用時を除き全員の賛成が必要となり、非常にハードルが高くコミュニティの結束が欠かせない。

大和ライフネクストでは「-築30年からの-あなたのマンションの将来を設計する本」を無料で配布する。問い合わせ先は電話0120-54-4068で平日午前9時~午後6時まで受け付け。また近く、「マンションゲンキLABO」と題したマンション管理の有識者や実務者が発信していくサイトを開設する予定としている。

(了)

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