この中でも判断が分かれるのはシステム障害である。手作業で手続きを行った場合、後日システムにその処理に関するデータを入力する必要が生じる。これは、東日本大震災においても各社の作業負担が非常に重かったとされている。システムが復旧するまでその作業をしないという判断もあり得る。 
社会インフラの供給途絶という事態にまで備えることは困難だとする声もあるが、停電等によって、業務が停止することが許容されるかどうかという問題である。仮に経営判断として停止を許容できないという結論に至ったのであれば、すべての業務を通常通り行うことはできないとしても、何らかの手段を講じることで業務継続を図る必要がある。 

例えば、先ほど紹介した自動車貨物運送B社では、東日本大震災後、倉庫の温度管理を停電時にも継続するため、自社の事業拠点に自家発電設備を設置した。比較的投資額が少ないカセットボンベ発電機や蓄電池等を不意の停電に備えて活用する事業者は少しずつ増えている。断水についても非常用トイレや最低限の飲料水を備蓄しておかなければ、ただちに業務が停止することになりかねない。

■検討結果の取りまとめとその後の対応 
最終的な取りまとめの際に問題になるのは、復旧手順を検討した結果、目標復旧期間を達成することが困難と判明することである。この場合、BCPを画餅としないように、目標復旧期間を変更し、実際にかかると想定した数字にするべきである。 

また、取りまとめ結果は文書化した上で、内容に関する教育や訓練を継続的に行い、社員に身に着けてもらうとともに、訓練結果を踏まえ継続的な改善を図ることが重要である。 

なお、目標復旧期間は最終的には競合他社と比較して競争力のあるものにすることが望ましい。時には新規の設備投資、業務プロセスや立地の変更など事業の大きな見直しを考慮する必要もあろう。このような大きな変更は、継続的な検討が必要となるため、「課題一覧表」などの形でとりまとめ、課題として継続的に検討することを勧める。

■業界団体の活用が今後重要に
貨物自動車運送事業者が単独で事業継続を図ることは難しい場合も少なくないだろう。東日本大震災発生以前は、災害時に業界団体が対応の調整を図ることは、独占禁止法等の法令に触れる可能性があるとされてきた。しかし、「被災地への救援物資配送に関する業界での調整について」(平成23年3月18日)や「震災等緊急時における取組に係る想定事例集」(平成24年3月)など公正取引委員会が震災後に発信した通知等により、業界団体による災害対応の調整が法令上許容される条件が次第に明らかになっている。 

これにより、中堅中小企業でも従来から行われてきた別地域の同業他社との連携に加え、業界団体の活用による事業継続対策が可能になった。今後は、自社の競争環境を踏まえ、荷主・貨物の種類や特性、組織や人材など自社の状況に合わせて、継続的な取り組みを進めることが望まれる。