阪神・淡路大震災時の神戸市中央区に開設された避難所(出典:Wikipedia)

(※【第1章】 災害準備編~本当に準備するべきことは?!(前編)「個人・企業レベルの災害準備」から続きます。)

【避難の形】 

そして、生き残った後に考えなければならない次のステップが避難生活である。今回の災害対策基本法等の一部を改正する法律案の中でも、このことは新たな項目として追記されている。 

「災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、避難のための立退きを行うことによりかえつて人の生命又は身体に危険が及ぶおそれがあると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の居住者等に対し、屋内での待避その他の屋内における避難のための安全確保に関する措置を指示することができる」 

これも難しい表現なので、噛み砕いて説明すると、何が何でも避難所へ行けば良いという事でなく、災害の規模・種類に応じて臨機応変に最適な避難の形を取ることが望ましいということだ。 

以下、避難の形について説明しよう。

●短期屋内退避:
数時間から数日、生き延びるための避難の形である。あらかじめ自宅や職場などで決められた部屋へ移動し、仮に危険物質などの暴露の恐れがある場合は、素早く空調、ドア、窓などの開口部をシールで目張りし、空気中の危険物質などの濃度が安全レベルに下がるまで身を守る。福島第一原発事故では空気中の線量レベル、拡散予測などのデータを考慮に入れた安全な避難行動は取られたのだろうか?また、事前に決められた部屋へ必要な防災グッズ(スナック、ラジオ、水、懐中電灯など)などを準備することも忘れてはならない。

●中・長期屋内退避:
数日~2週間ほど屋内退避にて生き延びる形である。一般的に、流行性伝染病など外出によるリスクが高い場合にとられる措置である。当然、あらかじめ決められた場所へ最大2週間分の必要な防災グッズを備えなければならない。

●共同・広域避難所:
文字通り、1カ所に多くの被災者を集団で避難させる場所である。通常、水・食料・医薬品・トイレなどの生活に必要なモノは揃っているが、各自がそれぞれ3日分の防災グッズを持参するのが望ましい。

【事前防災プラン作成】 
さて、防護行動の正しい取り方を学習するのと同時に、各自が事前の防災プランを作成することが重要なのは言うまでもない。事前防災プランを作成することが命を繋ぐための分かれ道になる。

●家族との連絡方法
●居住地域以外(県外または海外)の中継連絡場所
●避難の形に応じた対応策(屋内退避または広域避難場所)
●自宅、学校、会社での避難経路確認
●緊急時の交通手段 

ここで強調しなければならないのは、災害発生時に最優先しなければならないのは、それぞれの家族が安全であるということだ。家族の安全が確認できるかどうかは次のアクションを起こす上で重要な要素になる。普段から家族で事前防災プランについて話し合い、訓練を重ねることを強く推奨したい。

【防災グッズ】 
筆者の勤務していた米陸軍では“Ready Army”というプログラムがあり、軍に勤務している関係者、家族が災害時に備えなければならない「防災グッズ」のリストを提供している。ここでその一部を紹介する。

【必需品】
□水:1人最低1日4リットルを3日分(2リットル飲料用、2リットル衛生用)
□食料(※災害食):保存食3日分
(非要冷蔵または調理を必要としないモノで栄養価の高い缶詰やシリアルなど)
□缶切(万能ナイフなどが便利)
□再利用可能なプラスティック製皿、コップ、スプーンなど
□救急箱
□処方箋
□N95マスク(米国労働安全衛生研究所のN95規格をクリアし、認可された微粒子用マスク)
□ウエットティッシュやゴミ袋などの衛生用品やトイレ用品。懐中電灯(電池式または手動式充電機能付き)
□ラジオ、携帯電話充電器
□予備電池
□蛍光色ポンチョ
□季節に応じた適切な服装(防寒着)
□現金
□電気・ガスの元栓を止めるための工具類
□地図と事前防災プラン
□重要書類
□緊急対策ハンドブック

【特別必需品】
□乳幼児がいる家庭では離乳食やオムツ
□ペットがいる家庭ではペットフード、薬、水、かご等
□殺菌剤・消毒剤
□防水性容器、マッチやライターなど
□寝袋等の寝具類
□コート、ジャケット、雨具
□消火器
□筆記用具
□本、ゲーム、パズル、おもちゃ等の娯楽品

※「ざま災害ボランティアネットワーク」の濱田政宏代表は災害時の非常食を「災害食」として定義すべきだと主張している。一般的に「非常時に備える食」という意味で「非常食」が備蓄されているが、果たしてこれは災害時に機能を発揮するだろうか?米軍では、MREと呼ばれる軍隊の野戦食がある。メニューも豊富で栄養価も高く、これが意外と美味しい。災害時ほど、暖くて栄養価の高い美味しい食事を摂りたいものだ。人間の元気の元は食事からであるといっても過言ではない。