2019/01/30
葛西優香の23区防災ぶらり散歩
障害を持つ娘と過ごす母の気持ち
「助けてほしいと訴えても皆さんもどうしたらいいのか…わからないと思うんです。ヘルプカードやコミュニケーション用のバンダナは見たことがありますか」とお話してくださったのは、障害者の地域活動支援センターIII型 「麦の家」理事長・礒崎(崎の右上は立)たか子さん。
CSWとは、日頃からコミュニケーションを取り、相談しながら、障害のある子どもの親として地域社会に働きかけを続けておられます。
「障害と一言で言っても様々な症状があります。また見た目ではわからないこともあります。私の娘は、急に発作が起きるので普通に過ごしていてバタンと倒れる時があるのです。どうやって対応したらいいかわからなくなりますよね」と礒崎さん。
災害時に同じ避難所で過ごしているときに共生するには、お互いに「知る」そして「助け合う」環境づくりが必要ですね。
「見た目でわからない障害も含め、自分は助けてほしいんだということを示す『ヘルプカード』。障害の症状や緊急連絡先が書けるようになっています」(礒崎さん)。
「『耳が聞こえない』ことを示すバンダナ。被害状況が放送などで流れていても聞こえない方が隣にいるという気づきになります」(礒崎さん)。
礒崎さんは、区内で行われている帰宅困難者対応の会議にも出席されています。そこまで熱心に動かれるのは、ご自身の体験が大きかったようです。
昭和50年(1975)、礒崎さんの次女は2歳半で化膿性髄膜炎の後遺症を負い、言葉を失い、半身マヒが残りました。娘が幼稚園選びの時期になり、足が止まりました。
「行く場所がなかった」(礒崎さん)。
でも自分で探すしかないと思い、動き回られました。小学部へ行く時も同じ。礒崎さんは「知的と身体両方の障害があるとどこの学校に行けばいいのか全然わからなかった」と振り返ります。学校が見つかったとしても、スクールバスが家の近くまでお迎えに来てもらえない状況。ここでも礒崎さんは動き、家の近くまでバスが送迎に来てくださることに。
今までの人生、自分自身で動き、状況を変えてきた礒崎さん。動かなければ何も変わらないという経験があるからこそ、今も地域の会議に参加し、ただ求めるだけではなく、地域住民それぞれが暮らしやすいように声を挙げておられます。
「頼るだけではなくて、自分たちではどこまでできるかを伝え、これ以上は難しいので助けがほしいと伝えるようにしている」と礒崎さん。
「受け身で助けてほしいと思っていてもだめで、助け合うには発信することが必要だと思っているんです。会議に出席して、配慮してほしいことがあれば、伝える。伝えないと皆さんもわからないですから」と、自ら行動して、対策案を考えようと意欲的に行動されています。
- keyword
- 23区防災ぶらり散歩
- 豊島区
- コミュニティソーシャルワーカー
葛西優香の23区防災ぶらり散歩の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方