2019/01/18
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
怖いヒートショック
この断熱エコハウスの住まい手は、暮らしかた冒険家の 伊藤菜衣子(いとう さいこ)さんです。
伊藤さんがなぜこのような家を作られたかについては、こちらの「これからのリノベーション」の「はじめに」に詳しく書かれています。
「はじめに」より引用
そんな時、竹内昌義さんがFacebookに「山形エコハウス」という高性能なエコハウスが震災時に電気が供給されなくても快適に稼働していたことを書かれていて、冬の寒い日に見学させてもらう機会を得ました。熊本の家では、ほんの小さなスペースさえも温まりきらない薪と同量で、全館一日中ポカポカになっている家を見て、家づくりの技術は進化しているのだなぁ、と感動しました。自分の手を汚して家づくりと向き合った結果、わたしにとっての最良の家は、快適とエコが共存する「高性能なエコハウス」という予想外の答えが出たのです。
ただ、フリーランスで不安定な収入の私には、何千万円もする新築マイホームは、夢の夢のように感じました。リノベーションならば、自分の手が届く範囲で、快適でエコな家を手に入れることができるのではないかと考えました。熊本の家は賃貸だったので、いろいろな制約があり断念しましたが、本誌にてP68に掲載する私の家「暮らしかた冒険家 札幌の家」は、最前線で活躍するたくさんのプロフェッショナルたちの叡智によって断熱リノベーションを実現した事例です。
ここで、伊藤さんはたくさんのプロフェッショナルの叡智について紹介されていますが、伊藤さんの叡智もすごいのです。このお家の外観は、黒色の渋みのある色合い。実は焼杉がない北海道で黒い木の外壁にしたいと思い、プロは思いつかないし、やったこともないという墨汁を天然の防腐剤と混ぜて黒にして、自分たちで塗られたそうです。さすが、暮らし方の冒険家、お見事です。お話をうかがっても、断熱について研究され尽くされていて、Q値とか、UA値とか、C値とか、断熱性能を測る値がすらすら出てくるのです。
Q値とUA値は熱の逃げる量。C値は家の気密性です。数値が少ないほど熱が逃げにくく暖かい住宅になります。理想的なQ値は1.6といわれていますが、国の基準は2.7。30年の電気代の差額は138万円にもなると言われています。(電気代28円 / kWhの場合)
で、伊藤さんもおっしゃっているように日本の家は寒いのです。「夏をむねとすべし」といったのは、あの吉田兼好の徒然草です。
徒然草55段「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり」。
寒さはなんとかなるけど、暑さは大変なので、夏を基準に家づくりを考えましょうということだそうですが、でも、寒さ、なんとかなってないですよね。
現在、冬の高齢者の溺死の多さが問題になっています。これは、高齢者が冬に泳ぎに行っているわけではありません。風呂場と脱衣所の温度差によるヒートショックによる心筋梗塞や脳梗塞で、死者は交通事故死の4倍と言われています。ヒートショックというと、風呂の熱さだけが原因のように想像されている人もいるようなのですが、そもそもの原因は家の寒さですよね。
だから、寒さは全くなんとかなっていない訳です。消費者庁は毎年、ヒートショックに対し注意換気していますが、溺死者数は減っていません。
ここにあるように脱衣所に暖房を導入するのも対処法ではありますが、家自体を暖かくしたほうがもっと効果が高いですよね。
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方