5 備蓄品は、誰が、どこで保管するのか 

前述したように、備蓄品は使用する場所の近くに、分散して置くことが重要です。

従業員が使うヘルメット、飲料水、食料、毛布などは、各自の机の脇か引き出しの中に保管し、フロア内で共同使用する救急箱、ほうき、ゴミ袋、ランタンなどはフロア内の書庫がベストです。また、来客者や帰宅困難者向けのものは、宿泊場所である会議室などで保管します。 

地震が発生し、停電でエレベータが使用できないことを前提に、保管先までの運搬方法についても、あらかじめ検討しておきます。

6 外部に助けてもらおう 

事務所内で自動販売機を設置している場合、その中に相当数の飲料水があります。業者と相談し、地震発生時には、残量を自由に使用できるようにしておくだけで、飲料水の備蓄量は減少します。最近では、おかしやパンの販売機もあります。積極的に活用してください。 

また、社内食堂を外部業者に委託している場合は、あらかじめ必要となる食料の確保をお願いすることもできます。 

さらに、近隣の販売店との間で地震発生時の食料供給の協定をしておくことも検討してください。

7 備蓄品は、使用することが必要 

水や食糧の備蓄に当たって、賞味期限の長いものを備蓄していませんか?備蓄品は、出来るだけ日常的に使用しなければ意味がありません。 年1回の震災対策訓練で、備蓄品の賞味期限を確認するとともに、実際に食事するまでの準備の時間、後片付けの時間、さらにゴミの量などをチェックすることが必要です。2ℓのペットボトルで備蓄していると、水を配る際に紙コップが必要となり、持ち運びも大変です。 平常時には男女別のトイレを、地震時にはどちらか1カ所に集中させたり、数少ない携帯トイレを有効に使用するため、「小便1回」で廃棄しない方法など、使用方法の留意事項も用意しておきます。

8 地震後のゴミ問題 

地震が発生すると、清掃車によるゴミの回収も数週間にわたりできなくなります。このため、トイレの汚物や生ゴミなどの長期間保管が必要不可欠となります。 

地震後のゴミは相当量になります。このため、臭いの出る汚物類はトイレで保管、ペットボトルや空き瓶は給湯室に、燃えるゴミなどはベランダと、あらかじめゴミ置き場を考えておきます。 

また、紙コップや紙皿など使用後にゴミになるものや、食料の残りなども考慮した備蓄品を選定しておくことも重要です。9 無駄な備蓄をしないポイント これまで記載したように、無駄な備蓄をしないポイントを次の7点にまとめてみました。
(1) 備蓄品は、時系列に使用する場面を考え、見直しを図る
(2) 備蓄する数量は、必要最小限にする
(3) 平常時に使用できるようものを備蓄する
(4) 個人用の備蓄は、各自の机やロッカーに保管する
(5) 使用後のゴミが少なくなるものを備蓄する
(6) 自動販売機の活用、関連業者との連携を図る
(7) 備蓄品を実際に使用してみる

10 齋藤塾の実践例 

筆者が支援してきた備蓄品の検討や見直し事例を3点挙げます。特に、特別養護老人ホームの栄養士を中心に検討された例では、7日間の献立を全面的に見直し、実際に食事提供訓練も行っています。
(1) 高齢者福祉施設における備蓄の見直し
(2) 配送会社における車載防災用品
(3) 行政の災害時対応必要備品一覧 

次回は「震災対策訓練を考える」です。