事業継続段階の対応
初動対応により被害の拡大を阻止した後は、被害状況を確認し、重要業務については応急対応により継続を図りつつ、復旧手順を検討し、順次復旧を図っていくことが通常の事業継続の考え方だが、大学の場合においては、民間事業者とは異なり、すぐさま復旧に移っていくことが難しい。 

安否確認を例とすれば、初動対応の段階から進められてきた在学生や教職員を対象とした安否確認は一旦収束するものの、卒業生組織、名誉教授、外国留学中の学生や教職員など、安否を確認しなければならない対象は徐々に広がっていく。大学をとりまく利害関係者の多さが課題の早急な解決を阻害することが多い。 

しかし、学内の情報システムの維持・早期復旧、被災した学生への支援、教育・研究環境の継続・早期復旧といった課題は、後回しにすることはできない。文部科学省などから発信される通達などを確認しながら、通常の事務組織中心に課題を検討しつつ、必要に応じて教育組織の判断を仰いで、大学としての方針を決定していくという通常のプロセスを進めていく必要がある。そのために、平時から緊急時対応の目的と達成するために必要な行動を明確にしていくことが重要である。

普段からの準備 
以前から初動対応から応急対応までの手はずについて文書化し、これをブラッシュアップしていく仕組みとともに、関係者への研修や訓練を通じてスキルアップを図っていくことの重要性については再三繰り返してきたところだが、大学の場合は、大人数がいることを考えると、物資・備蓄面での対策の重要性が特に高い。 

緊急時に備えて、後回しにできないものといえば、最初に思いつくのは非常食となりがちだが、健康な成人であれば、1日2日の絶食には耐えることを考えると災害食は必ずしも最優先ではない。後回しにできないのは、トイレ、水、そして初動対応に必要な備品・設備である。 

数万人の学生がいるキャンパスに、全学生×9食分の非常食を備蓄しておくことはできないかもしれないが、トイレと水だけは優先して確保しておく必要性が特に高い。トイレについては、マンホールトイレなどの設備面での手立てにより比較的大人数が使用できる設備を導入することを勧める。また、水については、全量を確保しようとするとコストの問題が無視できない。以前から紹介している自販機の活用に加え、学内売店の在庫確保、学内食堂の在庫確保、貯水槽から直接取水する訓練の実施などを進め、一部をランニングストックと呼ばれる流通在庫の活用により備蓄することで、低コスト運営を志向することが重要だと考えている。

(了)