企業は地域と共存している

企業は、電気、水道、ガスなどのライフラインや道路、公共交通機関など社会インフラを近隣の企業や居住者と共有して使用し、実質的には共存しています。

BCPがある程度形になり、訓練を繰り返し行っていくと、自社だけでBCPを遂行することが困難なことに気づくでしょう。それは、どのような業種でも1企業単体ですべての事業を完結することは困難であること、さらに事業の多くが地域の社会インフラに依存しているからです。

この社会インフラに関する整備状況や災害による被害想定、緊急時の防災情報は、事業所が所在する地域を管轄する国の機関や市町村役場から発信されます。災害発生が心配されるような緊急時にこれら情報の意味を即座に理解し、適切な事業継続活動に結びつけることはなかなか難しいです。

 

ハザードマップを読み解けますか?

例えばハザードマップ。BCPを策定する上で一度は確認したことがあるかと思いますが、ハザードマップで示される震度や浸水範囲・深さ、その根拠である想定条件が示す意味について、ハザードマップの紙面から読み取ることは実は容易ではありません。

倉敷市ハザードマップ(http://www.city.kurashiki.okayama.jp)
地理院タイル(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)

事例でご説明します。上図は平成30年7月豪雨で甚大な被害が発生した倉敷市真備町のハザードマップです。実際の浸水域とハザードマップの想定浸水域がよく一致していたとされています。下図は国土地理院のウエブサイト「地理院地図」を利用して標高の高低を筆者が色分けしたものです。双方を見比べていただくと、ハザードマップで着色されている範囲と標高が低い範囲(青~緑色)もよく一致していることがわかりますよね。

理屈は簡単です。水は高いところから低いところに流れます。ハザードマップでは氾濫の影響がある範囲が着色されていますが、それは当然周辺地域と比較して標高の低い地域ということです。一方、ハザードマップは、ある降雨条件を想定し、堤防の破堤箇所を設定して氾濫した結果が着色されています。つまり、この想定条件ではない状況で災害が発生した場合はハザードマップ通りの結果にはならない可能性があります。

ですから、ハザードマップは結果のみに着目するのではなく、結果の背景にある想定条件や自社の立地状況、過去の災害発生状況をふまえて“読み解く”必要があるのです。