永井氏は災害対応における戦略の重要性を語った

リスク対策.comは12日、東京都千代田区の明治薬科大学剛堂会館ビルで第3回危機管理塾を開催。システム開発などを手がけるクレオの内部統制室リスクマネジメントグループマネージャーの永井勝氏が「BCP(事業継続計画)は本当に回せるのか!? Bousai Continuity Planでいいじゃないか」をテーマに講演した。

永井氏はグループ会社で2002年からITの事業継続管理に取り組み、後に自然災害など他の危機も想定したリスクマネジメント専門部門を設立。現在はクレオ本体でこの分野に取り組んでいる。

永井氏は「BCPと防災分けて考える必要は、個人的ないと思う」とし、防災と事業継続に深い関係があることを説明。事業継続については原因事象と結果事象。両側面から考えるべきだとした。

災害を含めた緊急時に企業は、従業員・家族の安全確保や雇用維持といった社会的責任のほか、顧客や取引先の安全確保や営業再開支援といった社会的信用を守ることも実現しないといけないことを説明。また、近年は災害がらみの訴訟が多く、「過去にあった気象現象は不可抗力として認められにくい。また災害発生前に安全配慮義務を尽くしていても、発災後に責任者の適切な指示がないと安全配慮義務違反になる」と解説。過去の災害を踏まえた防災マニュアルの準備に加え。いざという時にしっかり行動するための教育・訓練の重要性も語った。

「BCPについては被災シナリオ多く作るべき。そしてそこから戦略を考えることが重要」と語る永井氏は、「戦略は最終的なゴールを数値で表すなど明確にし、そのために何をするのか具体化が必要」と述べ、例として被災しても主力製品を3日以内に製造再開という目的を定め、そのためにすべきことを具体化するといった取り組みを説明した。そして、戦略実現のために復旧や代替といった戦略の組み合わせについても説明した。

危機が起こると需給バランスが崩れるが、「需要が変わらないもしくは増えるなら供給し続けるための戦略、需要が減ったもしくはなくなる場合は事業停止・中断のために何をすべきか考えることになるだろう」と永井氏は予測。被害の程度による考え方として「軽微なら早期の復旧戦略でいいが、甚大なら代替、壊滅なら事業転換やリストラの可能性が出てくる。代替戦略の場合は大企業であれば他拠点代替も可能だが、そうでない場合は他社設備を利用するなどの工夫も必要になる」と述べた。

BCPの実現のためには緊急時に行動ができるよう日常的に取り組む従業員教育だけでなく、「被災した従業員が生活を再建し、安全・安心で業務に従事できる状態とすることが必要」と永井氏は説明。平時からの取り組みを通じて安全配慮を尽くし、発災後も社会的責任を果たしながら、従業員が生活を再建し早期復興に取り組めることが重要とした。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介