「TwitterやFacebookなどのSNSがこれだけ社会に浸透している昨今、企業はSNS上のレピュテーションリスクに非常に敏感になっている」と話すのは、検索エンジン対策やSNSの監視業務などを営む株式会社エルテス代表取締役の菅原貴弘氏。クライアントの多くは飲食業や食品メーカーなどだが、近年は業種を問わずさまざまな企業から引き合いがあるという。

「例えば銀行に勤めている方が、お子さんに『今日、芸能人が来店した』と話すと、それがすぐにSNSで拡散してしまう。10年前では問題にならなかったことが、今では大きなリスクに発展する可能性がある」とする。

同社ではSNS上の投稿などのビックデータを監視し、企業にとって問題に発展しそうな投稿を検知。最終的には専門のスタッフがリスクを評価し、企業の担当者に対策を促すことで炎上を防ぐ。人がSNSに投稿するのは主に業務時間外の深夜や土日祝日が多いため、担当役員に深夜連絡することもあるという。そのようなときに、誤りがあっては許されない。「必ず人がリスクを評価することが、信頼につながっている」と話す。

SNS対応などで注意しなければいけない点は、これまで企業としては法的に安全とされていたことが、投稿が拡散することで瞬く間にリスクに発展する点だ。例えば2014年に発生した大手食品会社のカップ麺における異物混入事件では、当初は投稿を顧問弁護士に相談し、会社として違法性がないと判断したため対応が遅れたのではと指摘する。

「結果としてその会社は工場を一時閉鎖するなど迅速な対応をとり、レピュテーション(風評)を上げることができた。法的リスクと風評リスクのバランスをとることが、SNS時代には重要だ」(菅原氏)。さらに同社は今年2月から、従業員のパソコン使用時のログデータを解析し、重要顧客データの情報漏えいなど、内部リスクを予兆する内部不正検知サービス「インターナルリスク・インテリジェンス」の提供を開始した。社内のビッグデータを解析し、顧客データの大量コピーなど不自然な行動を行っている社員を検知し、企業に通報する。ビックデータ解析とリスク評価に長けた同社ならではのサービスと言えるだろう。

エルテスがこれから目指すのは、ビッグデータ解析による、より大きなリスクの回避だ。例えば米国では現在、入国ビザ発給の審査においてSNSへの投稿内容を確認しているという。菅原氏は「2020年には東京オリンピックが開催される。現在さまざまなハードウェアによるセキュリティが開発されているが、ビッグデータを解析して危険人物を特定できるようになれば、厳重なハードウェア対策は不要になる」と、リスク対策におけるビッグデータ活用の重要性について訴えている。

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