※画像はイメージです

前回は、ガス業の事業構造と過去の被災事例を紹介した上で、受援計画を事前に策定することの重要性について解説した。本稿では、既にガス業では災害対策マニュアルが整備されていることが多い実態を踏まえ、マニュアルの作り方ではなく、近年の災害などにおいて明らかになった対応上の課題と改善のポイントを示す。

編集部注:「リスク対策.com」本誌2016年1月25日号(Vol.52)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年9月29日)

発災直後の対応

発災直後にガス業が取り組まなければならないのは、お客さまへの情報提供、お客さまからの照会対応、そして供給保安の確保のための点検である。

まずお客さまへの情報提供だが、一定の大きさ以上の揺れを感知した場合、自動的に供給を中断するマイコンメーターの普及が全国的に進んだことにより、地震の場合は、発生直後から、供給を中断したマイコンメーターの復旧方法が分からず、問い合わせが殺到する現象が確認されている。復旧といっても、敷地内のガス栓を一度閉止し、メーターについているボタンを押下することで復旧するシンプルな仕組みになっているが、実態としては現場まで出向き、マイコンメーターの操作を代行せざるを得ない事例も多い。

大手都市ガス事業者では、平時から自社HPに復旧方法を説明する記事を掲載しているほか、テレビやラジオ向けにマイコンメーターの操作方法を説明するCMを事前に準備し、緊急時にはお客様への告知を迅速に開始できる仕組みを作っている。このような対応は中小事業者では難しいと思われがちだが、発災直後はマスコミでも流す情報を求めており、ガス業においてマスコミと連携する仕組みを作っておくことが望ましい。

既にLPガス業界では、各都道府県のLPガス協会と各地の放送局が事前に協定を締結し、マイコンメーターの閉止方法について告知できるようにする動きがある。一方、都市ガス事業者では、個々の事業者における取組みが中心となっている。