「リスク対策.com」VOL.52 2015年11月掲載記事

 

マーシュブローカージャパン株式会社シニアバイスプレジデント/
ジャパンプラクティスリーダー/マーシュリスクコンサルティング 小森園孝輔

2015年10月25日(日)、常総市を訪れた。まず、鬼怒川氾濫による大規模水害により被災された方々に心よりお見舞い申し上げたい。1カ月半が経過したが、三坂町、若宮戸地区など氾濫流で家屋が甚大な被害をうけた地域以外は浸水域約40㎢におよぶ水害が起こったとは思えないまでに復旧されていた。また、休日の市役所職員の被災者対応、多くの災害復旧ボランティアの方々を目のあたりにし、改めて被災した方々の生活の早期再建を強く願った。ここでは、常総市ホームページ、国土交通省資料などの公知情報より得られた常総市の対応に基づいて、今後も増加すると考えられる大規模な洪水に対して公益を守る立場の地方自治体のリスクマネジメントのあり方について問題提起したい。

利根川水系河川整備基本方針によると、利根川水系の基本高水のピーク流量の計画規模は、鬼怒川については1/100確率流量と観測史上最大流量のいずれか大きい値を採用することとしている。基本高水ピーク流量算定手法の詳細は割愛するが、その算定の基本になる確率降雨量は鬼怒川については上流の石井地点(栃木県宇都宮市)での大正13年~昭和41年までの44年間について、100mm以上の流域平均3日雨量を統計処理した362mmを採用している。

今回の洪水では、9月9日から10日にかけて、石井地点上流域の流域平均最大24時間雨量410mmを記録し、これまでの最多雨量を記録した。また、3日間雨量(流域平均)は501mmであった※1。 

鬼怒川水海道地点(常総市水海道本町)および平方地点(下妻市平方)において、観測史上最高水位を記録、計画高水位を超過、流下能力を上回る洪水となり、7カ所で溢水し常総市三坂町地先で堤防が決壊した(9月10日12:50)。浸水域は常総市役所本庁舎にまで至る大きな災害となった。

常総市の避難指示対応
堤防決壊前の9月9日22時54分から、国土交通省関東地方整備局下館河川事務所は川島水位観測所(決壊地点よりも24.6km上流)の観測水位をもとに常総市長に複数回電話連絡(ホットライン)にて、河川の水位、堤防決壊の危険性、堤防が決壊した場合にどの程度の時間でどこまで浸水するのか、などの情報を提供していたという※2。

上記の下館河川事務所の情報提供に加えて、常総市の避難勧告指示発令状況を時系列に示す。