通信の早期復旧へ
非常態勢で本部長を変える

東日本大震災では、発災直後からの通信規制に加え、通信ビルや中継ケーブルの被災により広範囲で電話が つながらない状況が続いた。NTT 東日本では、即座に災害対策本部を立ち上げ、復旧にあたった。同社の 災害対策本部の運営方法を取材した。

写真を拡大写真提供:NTT東日本

NTT 東日本では、非常態勢区分を3段階に分け、それに応じた災害対策本部を設置することにしてい る。  

第1態勢は、今回の東日本大震災のような、国 に緊急対策本部が設置される「著しく激甚な災害」 。 第2態勢は、新潟中越地震や中越沖地震のような 「局 地的な激甚災害」 。防災大臣が本部長になるような非常時災害対策本部が設置された時がこれに相当す る。第3態勢は、それ以外の地震災害や、豪雨・豪 雪などで通信への被害が見込まれる場合。  

さらに、この3区分の下に、災害対策本部は設置 されないが、情報連絡室を立ち上げ、情報を収集し ながら、いつでも本部が設置できる準備段階として警戒態勢というものがある(図1) 。

態勢の区分によって災害対策本部のトップが変わる。第1態勢では社長が災害対策本部の本部長に、 第2態勢では副社長クラスが、 そして第3態勢では、 サービス運営部長が本部長になる。そして、警戒態 勢では災害対策室長がトップに立つ。  

同社災害対策室長の中島康弘氏によると、第1態 勢ほどの広域な激甚災害になると、通信以外でもい ろいろな会社の重要業務に影響が出ることが考えら れるため、BCP(事業継続計画)の観点から、社長 が本部長に就くことにしているのだという。 ただし、 社長や副社長が本部長になった場合でも、技術的な 判断と対応指揮はサービス運営部長があたる。つま り経営判断と技術的な判断とを、しっかりと分けて 対応できるようにしているのだ。  

もちろん、すぐに被害状況や規模が明らかになら ない場合もあるため、 まず情報連絡室を立ち上げて、 その後、情報収集しながら第3態勢から第2態勢、 第1態勢へとエスカレーションしていく場合もある という。東日本大震災でも、発災直後はサービス運 営部長を本部長とした第3態勢の災害対策本部を設 置し、国の緊急災害対策本部が設置されると同時に 社長を本部長とした第1態勢に変更した。  

ちなみに、今後、東海地震の警戒宣言が発令され た場合には第2態勢となり、実際に発生した段階で 第1態勢になることが決められているという。

■支店の災害対策本部
各支店でも基本的な仕組みは同じ。ただし、態勢 の区分にかかわらず、基本的には支店長が現地の災 害対策本部長となる。状況がつかめていないような場合は支店でも情報連絡室が立ち上がり情報収集に あたり、通信に対する影響がどの程度かを見極めた 上で、災害対策本部の設置の判断をする。

■構成メンバー
災害対策本部のメンバーは、あらかじめ決められ た班体制で業務にあたる。各班は、関係する部門か ら構成される横断的な組織だ。  

構成としては、本部長の下に、情報統括班、サー ビス統制班、設備班、資材班、ユーザー対応班、広 報班、総務厚生班等が置かれる。  

情報統括班は災害対応の中心となり本部の運営 や、外部への応援要請などを行う。各班から上がっ てくる情報を本部長に上げるとともに、外から入手 した情報を整理して各班に伝える。  

サービス統制班は、通信サービスの被害状況を把 握する。  

設備班は、応急復旧、設備復旧など実際の措置に あたる。物理的な被害に対し、どこから、どういう 方法で復旧していくのか検討を行い対応にあたる。  

東日本大震災では、設備班の役割をもっと明確に 分類した方がいいということで、通信ビル内の通信 装置についての復旧対応にあたる所内設備班と、通 信ビルの外のケーブルなどの復旧対応にあたる所外 設備班、建物の躯体修繕や通信設備用電力などの維 持及び確保にあたる電力建物班とに分けた。  

このほか、資材班は、復旧資材などの調達と緊急 輸送にあたる。  

ユーザー対応班は、企業や自治体及び一般の顧客 に対しての対応を検討する。特設公衆電話を設置する場所を決めたり、避難所に対する通信確保のニー ズを把握することなどもユーザー対応班の業務。  

広報班は、顧客対応や報道対応といった活動がメ インになる。平時の広報室が中心となっているが、 広報以外のスタッフも加わる。  

そして、総務厚生班は、災害対応にあたるスタッ フの衣食住の手当てなどを行う。現地に派遣した社 員のホテルや食事の用意などだ。

■災害対策本部の配置
 NTT 東日本では、本社と各支店それぞれに常設 の災害対策室がある。本社では、50 人規模が入れる会議室が用意されており、さらに大規模災害時に は、1つ上の階についても、すべて災害対応に使え るようになっている。

写真を拡大災害対策室長の中島康弘氏

■東日本大震災での対応
東日本大震災では 直後からの通話規制に加え、 津波により通信ビルや中継伝送路が被災し、長期間 通信サービスが提供できない状況が続いた。本社で は、直後に災害対策本部が設置され、公衆電話の無 料化や、災害用伝言ダイヤルなどの運用を行う一方 で、被災した通信ビルや中継伝送路の応急復旧を進 めた。  

各支店でも発災直後から災害対策本部が立ち上がり、岩手、宮城、福島の被災3県の災害対策本部と 会議システムなどで情報共有しながら対応にあたっ たという。NTT 西日本でも災害対策本部は立ち上がり、移動電源車やポータブル衛星車の調達などを 要請し、広域支援が行われた。

■情報共有の仕組み
災害対策本部では、大画面に被災地の映像や、被 害状況、各班・支店の対応がリアルタイムに映し出 される。各班では、パソコンを使って、それぞれが 把握している被害状況や対応状況を、 「災害情報流 通システム」という情報共有ツールに打ち込んでい く。これらの情報は社内 LAN を通じて、すべての 災害対策メンバーに共有される仕組みだ。  それでも、情報の共有漏れを防ぐために定時報告 を行っている。 「発災当初は1時間に1回、落ちつ いてくると数時間に1回、半日に1回、各班がマイ クで現状を報告し合いました」 (中島氏) 。緊急な重 要事項については、定時報告を待たずに、随時報告 されることになるという。  この会議とは別に、経営トップと幹部層が情報共 有するための災害対策会議が定期的に行われる。こちらも、東日本大震災では、当初は1日に数回、落 ちついてくると1日に1回のペースで開催されたとする。

■GIS の活用
東日本大震災では、GIS(地理情報システム)を 活用した。それまでは、大きな地図上にマジックな どで被害状況を書き込むような作業をしていたが、 地図データ上で情報を一元管理できるようにした。 今後は、顧客に対しての情報提供ツールとしても、 活用を検討していきたいとしている。  

災害対策室長の中島氏の携帯には昼夜問わず、災害や故障に関する連絡が流れてくる。

「さまざまな 情報の中から取捨選択して、これは危ないというも のに対しては、即座に人を集めます。 (災害対策本 部の運営で) 大切なのは最初の情報に対する見極め」 と中島氏は話している。