運送から流通までを請け負う物流業者にとって、停電は、在庫データの喪失や保管倉庫の空調の停止など、重要業務を脅かす重大な問題となり得る。川崎陸送(本社:東京都港区 代表取締役社長:樋口恵一)では、東日本大震災を機に、全事業所の電源・電話回線のバックアップ体制を構築。社内だけに留まらず、荷主企 業の停電対策にも力を入れている。同社の停電対策の取り組みを取材した。

■3つの重要業務

川崎陸送は、主に大手食品メーカーの物流業務の 葛西流通センターへ 全般を請け負い、関東地方から九州地方を中心に保 管倉庫や営業所など、多くの拠点を持つ。東日本大 震災では、幸いにも同社の施設そのものには、大き な被害はなかった。しかし、地震、津波、原発と、 これまでに類のない複合災害となったため、同社で は、業務への影響が長期間に及ぶと判断し、震災直 後から、事業継続体制の構築に向けて動き出した。  

まず初めに、川崎陸送として、止めてはいけない 最優先業務を大きく3つに分けた。顧客の製品の賞 味期限・出荷履歴などの「在庫のデータ」 、製品の 品質を維持する「倉庫の温度管理」 、最後は「従業 員の給与支払い」だ。  

これらの活動を継続するためには、電源の確保が 不可欠となる。原発事故の影響により、計画停電など長期にわたる電力不足が想定されたことから、同 社では、すぐに電力のバックアップ体制の構築に動 いた。