大槌町安渡地区防災訓練の様子(写真提供:大矢根淳氏)
 


住民の合意形成が重要

「外部の人から見れば15分ルールは『人を見捨てる制度』に見えるかもしれない。しかし、実際に避難の説得に当たっていた消防団員が犠牲になってしまった安渡地区では、真剣に震災と向き合ってルールを決めつつある。復興というと公共施設や堤防の建設にばかり目がいき、人口と税収の回復がその指標になりがち。だが地域の復興は住民同士がコミュニケーションをとり、納得しながら進めるものだ。おかげで、安渡地区では他とは全く異なる地区防災計画ができた」と大矢根氏は語る。

津波被害の経験から防災に熱心に取り組んでいた安渡地区が新たに策定した津波防災計画の表紙には「今後とも、自然災害に決して油断せず、3.11の教訓を次世代に継承し、地域防災力の向上を続けることを肝に銘じるものである」と記されている。

地域住民が主導権を握り、ボトムアップ型で新たに防災計画を作り上げた安渡地区の住民でさえ、これまでの経験から次世代への危機意識の継承に不安を抱いていることは確かだ。とはいえ、少なくとも地区防災計画の策定を通して地域を見つめ直し、コミュニティに則した具体的な対策を考え、訓練を重ねることが継承の第一歩になることは間違いないだろう。