ボトムアップというのは、市民参加、官民連携、協働など、さまざまなシステムの必要性が叫ばれる中で、行政が一方的に推し進めるのではなく、市民自らが考えていかなくては真の共助は達成できないということ。阪神・淡路大震災まで防災はトップダウン型で、国、都道府県、市町村などの公助の責務とされ、自助や共助という概念はほとんど使われていなかった。したがって防災会議のメンバーには公的機関しか入れず、NPOやボランティアなどの力を認めながらも、彼らの行動をトップダウンで決めてきた。しかし、住民の命や安全を守る上で主体が誰かを考えれば、行政だけでなく、ボランティア、自治会、NPO、企業、地域住民など多岐にわたる。コミュニティの防災というのは1つの主人公だけであってはならないし、それぞれが対等の立場で、責任と権限を持って取り組まなくてはいけない。そのためには、トップダウンとボトムアップの両方をいかに融合させるかを考えていく必要がある。

学会がプラットフォームになる

さて、これらを踏まえて地区防災計画学会が果たすべき役割について考えてみたい。私は、地区防災計画を推進していくにあたって、特殊性と普遍性、多様性と一般性というようなことが課題になってくると思う。

地区というのは、それぞれ多様な姿を持っている。地形も違うし、産業構造も文化も住んでいる人も違う。その意味では、地区防災計画は、全国一律の金太郎飴のようなものではなく、各地区の特殊性を正しく反映させたものでなくてはいけない。しかし、好き勝手に甘い計画を認めていけばレベルの低い計画がたくさんできあがってしまうため、そこには一定の規律とシステムが求められる。

重要なことは住民が主体的に考えることで、それをボトムアップによって吸い上げ、専門的な助言を加えて実効性のある計画にしていくことが重要だと考えている。それぞれの個性を生かしながらも、防災力を伸ばしていくためのアドバイザーやサポーターなどの質も問われている。住民のさまざまな提案に対する行政の受け止め方も問われてくる。おそらく、各地域に一人ずつ専門家が入って行政を交えて議論していくような仕組みでないと住民主体の地区防災計画は実現できない。そのためのプラットフォームを学会が担っていくべきではないか。