こんにちは。サニー カミヤです。このコラムでは、6月12日に発生したフロリダ州オーランド市(ディズニーなどテーマパークのある観光都市)
で起こったMCI(Mass-casualty incident/多数傷病者事案から、日本の消防士、レスキュー隊、救急隊員、警察機動隊の方々がテロの発災現場で、どうやって安全に人命を助けるか?の基礎知識として「MCI現場における救急活動」を具体的にお伝えしていきたいと思います。

えっ?!日本でどんなMCIが起こるの?

日本国内で起こる可能性を考えて具体的にいうと、たとえば、数千個のねじや釘などを圧力鍋を使った榴散爆弾のような安価で誰でも簡単に作れるものから、ネット上には、日常、誰でも入手可能なものをテロ目的で使えば、自動小銃と同じくらいの大量殺傷能力のある危険な道具がたくさんあります。
※ここでは詳しくご紹介しません。

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「ISISが400人のメンバーをヨーロッパに派遣」~テロから身を守る方法~
http://www.risktaisaku.com/articles/-/1110

みなさんの消防署では、どの程度テロ対策ができていますか?

アメリカではRTF(Recue Task Force : レスキュー機動隊)が下記のようなテロリストに対応します。

●単独または複数人による犯行で、犯人は通常、トレーニングを積んでおり、犯行に関する知識(下見や動線チェック)もある。死ぬことすら本望である。
●軍事的な戦法を使い、周到に計画された犯行で、通常、効率的なコミュニケーション手段を持ち、実行犯以外の人物が調整をおこなっている。
●複合能力を持つ、高速銃弾、爆発的破砕武器を使用。
●除染が必要となる危険物質、毒性物質を使用。
●被害を拡大させるため、そして計画通りの反応を引き出し、対応を複雑化させるために火災を起こす。
●第一応答者(救急隊)に対し、意図的に二次的な攻撃をしかける。
●犯人が意図的に作り出した複雑な状況、もしくは救助隊員の能力や数に限りがあることが原因で生じる複雑かつ厳しい状況。

 

■「救急隊のテロ対応レスキュー タスクフォース」動画

(出典:YouTube)

RTF(Recue Task Force : レスキュー機動隊)の活動フォーメーション

アメリカでは、MCI 事件という指令が入った場合、現場によっても様々ですが、基本的に先着の警察官2人と救急隊員2名、救助隊員2名の計6名構成のRTF(Recue Task Force : レスキュー機動隊)が1チームとなってウォームゾーン(準危険地域)から自力避難することができない負傷者1名の救出にあたります。RTF1チームに対し負傷者1名を救急救助することが一般的です。

捜索救助活動におけるそれぞれの役割は、警察官2人が銃を構えた状態で負傷者検索救助の先頭に立って進み、そのすぐ後ろに「銃創等対応セット」を装備した救急隊員2名、担架搬送要員の救助隊員2名がバスケットストレッチャーを担当します。ほとんどの銃撃テロ等の場合、発生から約5分から15分で事態が終息することが多く、テロリストがすべて射殺または、拘束した場合は、消防だけの活動になり、警察機動隊は、多発テロに備えて、都市主要駅なバスターミナルなどへのパトロールに向かいます。

銃創等対応セット

出典:Rescue Essentials SCHOOL RESPONSE BAG (SRB)


 


主に止血を目的とした布製粘着滅菌パット類やラップは3つの外傷①四肢からの大量出血②緊張性気胸③気道閉塞などに対応するためのキットです。

バスケットストレッチャーを使う理由は、姿勢を低くして搬送でき、また、階段などは滑らせて搬送可能であること。さらに、要救助者を専用保護シート(帆布製等)でカバーすることで爆発等による飛散物からの負傷を予防することもできるからです。

応急救護活動の具体的な活動の流れ

まず、応急救護所はコールドゾーンと呼ばれる安全地域に設置されます。
RTFチームによって運び出されてきた要救助者は医師や救急救命士によって適切な処置が行われ、銃創などに対応できる医師チームが居る搬送先病院に向かいます。

一度、活動を終えたRTFチームは、感染予防のため、バスケットストレッチャーに付いた血や体液等をアルコールなどで清拭後、マスクやディスポ等の手袋の交換、感染予防ゴーグルなど、すべて消毒して、待機している搬送要員の最後尾に付きます。

現場建物の規模が大きい場合は、複数のRTFが同時進行で活動を行いますが、応急救護所は1カ所で対応し、次々に到着する高規格救急車をループ式に待機させ、スムーズに搬送できるようにコントロールします。

■消防・警察合同テロ対策部隊訓練(動画)


出典:YouTube

不測の事態に対応するためのイメージシミュレーションが大事

もし、武器を持った警察機動隊等がいないときに拳銃や自動小銃を持ったテロリストとに現場進入時に対面してしまった場合、戦う武器を持っていない消防士達が、どのような対応をとるか、隊員間で下記のようにイメージシミュレーションされた事例があります。

①「テロリスト」が拳銃などの武器を持っている場合: 
・とび口で銃をたたき落とし、落ちた銃を蹴って、部隊で一斉に取り押さえる。
・消火器を犯人の顔に対して噴射する。
・屋内消火栓で犯人に対して放水し、追いかけてくるようならホースを手放して、ノズルを暴れさせる。
など、現場にある施設、タイミングや対峙距離によって何ができるかを考えておく。
・撃たれないようにジグザグに逃げながら自動火災報知器などを次々と鳴らし、どこで何が起こっているかを知らせる。
・防犯カメラも活用し、手信号で必要な合図をする。
・無線は自分の居場所をテロリストに知らせることになる可能性がある。

②「テロリスト」が爆弾などを持っている場合:
・もし、今にも起爆スイッチを押しそうな場合は、できるだけ幅の厚いコンクリートの裏に隠れるか、遮蔽壁などが無い場合はテロリストに足を向けた状態で床に伏せる。
・スプリンクラー設備があれば作動させて爆弾が濡れて使えない状態にする。
・イスラム国に洗脳されたテロリストの場合、自爆する前に「アラーアクバル(神は偉大なり)」と叫んで自爆することが多いため、叫んだ瞬間に伏せる。


出典:YouTube

レスキュー活動時のリスク

警察以外の武器を持たず、また、武器のトレーニングを受けていない救急隊員らが脅威度の高いウォームゾーンで活動することは、どこの国でも頻繁に議論されてきました。

ところが、2013年にFBIが銃乱射事件の分析データを公表し、銃撃犯はテロ開始から5分から15分で銃弾を使い果たしてしまったり、自爆したり、または、狙撃されるため、RTFの一員として消防の救急隊員やレスキュー隊員がウォームゾーンで活動しても、リスクは遙かに少ないことがわかってきています。

災害現場本部は現場のリスク評価と状況沈静化を迅速に警察と消防が協力して見極め、「リスクが大きければ、多くの命を助けることができるが、リスクがない状態まで待っていては、誰も助けられない」ことを前提に任務を遂行しています。

また、同時に、もし、マスコミなどが現場に駆けつけ、取材が始まっている状態で、「リスクを受け入れられない」と判断し、ウォームゾーンでのRTF活動を拒絶すれば、別の社会的リスクを追うことになることも知られています。

RTF活動プロトコルをどのように作るべきか?

日本でMCIが発生する確率は低いかもしれませんが、YouTube等で過激内容にフィルターが掛からない限り、たくさんの危険な動画がアップされ続けると思います。

一度、発生してしまうとその被害は大きく、また、現場対応等も全国ネットで放送される可能性が高いため、特に世界的に知られていてTokyo, Kyoto,Osaka等、英語で誰でも知っているような日本の主要都市の消防局は、早急に警察と協力してRTF活動訓練などを行っていた方がいいかもしれません。

もし、さらに詳しいRTF活動内容や必要な装備リスト、プロトコル作成の手順、シミュレーションの方法など、ご興味がある方はご連絡ください。

具体的にアドバイスさせていただきます。

一般社団法人日本防災教育訓練センターHP
http://irescue.jp

(了)