カリフォルニア州で発生した大規模な山林火災の様子 (出典:Cal Fire)

こんにちは。サニー カミヤです。このコラムでは、毎年6月から9月に米カリフォルニア州ロサンゼルス郡で発生する、大規模な山火事で活躍している受刑者で組織された消防士たち、「ワイルドファイアーファイターズ」について、具体的にお伝えしていきたいと思います。

えっ?!受刑者を外に出して、脱走したりしないの?と思われる方が多いかも知れません。。

まずは、次のビデオをご覧ください。

「San Bernardino County - Inmate Fire Crew Program」(出典:You Tube)

カリフォルニア州サン・ベルナディオ郡では、ほぼ毎年、同じ時期に発生する大規模な山火事対策において、他の州や市町村からの人的応援を受けても消火活動に十分なマンパワーが足りず、また、応援を受けた際に発生する受援コストに頭を悩ませていました。

2011年6月、ロスアンゼルス郡保安局、ロスアンゼルス郡消防局の合同災害対策会議において「受刑者を消防士にできないか?」という画期的なアイデアが提案されました。

このユニークで画期的な取り組みを実現するため、パブリックヒアリング(公聴会)を開催したところ、地域住民から反対意見もありましたが、何度も話し合いが繰り返され、2012年6月、最終的に民意を受けて実現しました。

下記のビデオは過酷な山林火災で活躍する受刑者消防士達のストーリーです。

受刑者はさまざまな罪で刑務所に収容されていますが、同時にいろいろな社会経験やスキルも持っていますので、各自がお互いに得意な分野の技術を消防活動に生かしています。

ただ、山林での消防活動は傾斜のきつい山道を重たい装備を担いで登ったり、火災の輻射(ふくしゃ)熱と煙や煤などに囲まれた過酷な環境の中で消火作業を行うため、厳しい訓練に耐える精神力と強靱な体力をキープするなど、日々のたゆまない努力の継続が必要です。

出典:Cal Fire

下記のビデオではワイルドファイアーファイターズのトレーニング風景が紹介されています。

現在、カリフォルニア州内には44カ所の収容所で、約4500名のワイルドファイアーファイターズが活躍しており、毎年、約45名が新しく、受刑者の中から育っています。

各収容所内にあるワイルドファイアーファイターズの消防署には、常時、42名が勤務しており、山林火災における消火活動以外にも、行方不明者の捜索や避難誘導、水害対応、地震災害救助活動等 、それぞれの自然災害対応訓練も定期的に行っています。

もし、刑務所の受刑者による消防組織の予算や組織図、仕組みなど、詳しく知りたい方は下記のウェブサイトを参考にされてください。

■↓カリフォルニア州収容キャンプ消防組織のウェブサイト
http://www.cdcr.ca.gov/Conservation_Camps/

なお、州や郡によっても異なるようですが、一般的に刑務所内で受刑者が消防士になるためには下記の条件があるそうです。

・刑期が短いこと。
・収容所内での暴力行為を一度も起こしていないこと。
・男女とも年齢が18〜50歳代であること。
・再犯リスクの少ない受刑者だと判断されたこと。
・健康であること。
・消防活動を行いたい気持ちがあること。
・2週間の初任課基礎教育訓練課程を受け、学科試験と体力テストにパスすること。

受刑者にとってのメリット:
・収容受刑時間の合理化 (体力&精神力の強化、スキルの習得、資格の取得等)
・チームワークを通じての心の交流
・社会に役に立つ活動を通じて得られるヒーロー的達成感
・出所後の再就職のための下地作り
・労働意欲の向上
などです。

州にとってのメリット:
・特別なトレーニングを受けた山林火災専門の消防士を育てられること
・大規模災害時には約4000人のマンパワーを一度に充足できること
・再犯率が大幅に下がり、また、同期受刑者にも良い刺激を与えること
・住民生活の安全が向上すること
・時給2〜4ドル(約220円〜440円)で受刑者消防士を雇えること
などです。

下記はワイルドファイアーファイターズの危機管理訓練カリキュラム内にある、「火災旋風からの緊急避難について」ですが、日本における山林火災や地震時の火災からの避難にも役立つ内容だと思いますので、抜粋して、ご紹介いたします。