富士フイルム九州/イオン/再春館製薬所/工務店(アネシス・新産住拓)/熊本県構造計画研究所/トヨタ自動車の対応に学ぶ

熊本地震における企業の対応から学ばされることは多い。富士フイルム100%出資の生産子会社で、熊本県菊陽町にある富士フイルム九州は、地震などの自然災害を想定して繰り返し訓練をしてきたことで熊本地震の被災から早期に復旧した。同社はTACフィルムと呼ばれる液晶ディスプレイの構成部材である偏光板の保護膜を生産する。フィルムの厚みがサブミクロン(1万分の1㎜)単位でのズレも許されない精度の精密設備を持ちながら、東京にある富士フイルム本社の災害対策本部と連携し、発災から2 週間で生産を再開させた。

国内小売業最大手のイオンは、熊本地震で店舗が使えなくなりながらも屋外駐車場などで販売を続けるとともに、イオン九州、マックスバリュ九州、イオン本社からの迅速な支援により、早期に店舗での営業を再開させた。自治体からの要請に対しても、これまで積み重ねてきた訓練の経験を生かし、震災直後から物資を被災地に送り届けた。

地元工務店であるアネシスと新産住拓の2社は、毎年のように大きな被害をもたらす台風への備えを強化してきたことから、今回の地震でも迅速に対応した。

そして、震源地に本社を置く再春館製薬所は、大きな被害を受けながらも、被災した社員の安全を最優先に、社員の団結力と社長のリーダーシップで危機を乗り切った。

これの企業の取り組みの詳細は、7月25日発行のリスク対策.com「熊本地震 企業の対応」で詳しく紹介しているので参考にしてほしい。

リスク対策.com Vol.56  熊本地震 企業の対応

私の個人的な視点から、何が、なぜうまく対応できたのか、課題はなかったのか。これらを本社、現地の双方から取材・検証することで、BCPの見直すべき点を洗い出してみた。

以下、取材を通じて感じたことを15の項目でまとめてみた。

1.日々の備え
熊本地震における企業対応は、しっかりと災害に備えて準備をしてきたか否かで明確に結果が分かれた。繰り返し訓練をしてきた企業は、BCPで定めた「目標復旧時間」より早く事業を再開させるなど見事な対応を見せた。今回の事例から学ぶべき最も大きな点は「日々の備え」の重要さであろう。

では、「備える」とは何か。それは発生するだろう事態を予測し、その予測に対して、ハード・ソフト両面から対策を講じることである。富士フイルム九州は、建設時から布田川・日奈久断層の存在を把握し、さらに地震などの自然災害を想定して繰り返し訓練をしてきた。対策本部には必要な備蓄がされ、被害状況集計表などもすべて事前に用意されていた。具体的な備蓄品目や被害状況集計表は誌面に細かく紹介したので参考にしてほしい。

リスク対策.com Vol.56  熊本地震 企業の対応

安否確認訓練を行い、夜間での発災も想定し、夜間の参集訓練も実施。本社との情報共有の訓練も積み重ねてきた。平時にできないことが、緊急時にできないはずがない。「備え」がいかに大切かを学ばされる事例だ。

イオンにおいても、その訓練の数、そして質には驚かされる。「リアリティーのある訓練をやり続けなければいけないということで、従業員が犠牲になるような、これまでタブーとされた状況も想定し、かつ、ブラインド型(シナリオをあらかじめ公開しない方法)で実施をするなど、随時課題を洗い出し、あえて、対応が難しいシナリオにおいて訓練を実施することで、対応方法を改善してきた」(イオングループ総務部長の津末浩治氏)。

富士フイルム九州の対策本部

2. 避難場所、対策本部の設置場所
一方で、検証しなくてはいけないこともある。
例えば災害対策本部の設置場所だ。今回の熊本地震では、耐震を満たしていても、天井や壁が崩壊したり、オフィス家具類が散乱するなどして、一時的に施設は使えなくなった。社員をどこに避難させるのか、対策本部が使えなくなったときどうするのか、これは東京など都市圏においても考えておく必要がある。

ここでも、富士フイルム九州の事例を紹介したい。同社は、火災も想定して、本社工場とは離れた場所に対策本部室を設置していたことで、本震で一時的に施設内に入れない状況になっても、直後から対応にあたれた。繰り返しになるが、対策本部をどこに設置するか、仮に使えなくなった場合、どこに設置するのかは、企業だけでなく、自治体、そしてあらゆる組織が考え直すべき点だと感じた。

リスク対策.com Vol.30  機能する対策本部