2016/07/25
誌面情報 vol56
7000件の励まし
一方、フリーダイヤルの停止後も、ファックスとメールだけは誰もいないフロアに届き続け、顧客からは21日の時点で、全国から7000件もの励ましの言葉や注文が入っていた。
西川社長は、顧客にあてた手紙の中で「感謝の気持ちがあふれ胸がはちきれそうな想いを覚えました」とコメントしている。
同社が販売する化粧品や漢方薬は、長年愛用し続けている顧客が多い。「こちらの都合だけで長期間待ってくれとは言えません」と大庭氏は語気を強める。事業の再開については、システムの復旧と、コールセンターの再開、商品の発送体制の整備などが必要だが、クリーンルームは壁が崩壊し、製造ラインは崩れ、商品を充填して包装する機械が壊れていた。
同社では、製品を製造してから3週間以内に顧客に届ける生産体制を敷いているため、在庫を多く持たない。それでも、被災した倉庫から、無傷の商品を運び出し、顧客へ届ける作業を24日から開始。同時に機械設備の修復、コールセンターの清掃を行い、25日にはコールセンター業務と一部生産の再開にこぎつけ、5月の連休明けには全面再開を果たした。「皆が必死になったことで信じられないスピードで再開ができました」と大庭氏は語る。
危機に強い社風
もともと、1000人近い社員が間仕切りのないワンフロアで働くほど同社はコミュニケーションを重視している。20年ほど前、同社のテレマーケティング手法は強引と批判を受け、以来TM(テレマーケティング)改革を全社を挙げ遂行してきた。その一環として、スタッフ間のコミュニケーションも強化してきたのだ。それが、今回の災害対応でも機能した。どこで、誰がどんな作業を進めているか、どんな支援が必要かを社内全体で即座に共有できる。それに加え、西川社長のリーダーシップにより目標・目的が明確化され、即座に全体調整がとれた活動が展開できる――。
震災直後より西川社長が掲げた復興方針は「社員とその家族の生活を守る」「お客様へのサービスを一刻も早く再開する」「地元である益城町・熊本への応援」の3つの柱。
「自分たちを育ててくれた熊本県や益城町に対して企業が果たせる責任としてできる限りのことを行いたい」という西川社長の言葉を受け、同社では復興部を創設。同じ地域にある会社として、社員が交代で直接近隣の避難所を訪れ、必要な支援を把握しながら、清掃や炊き出しの応援、保湿液、保護乳液、洗顔せっけんの提供など、少しでも心和らぐ生活を送れるための支援活動を続けている。
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