九州電力の高圧発電機車に給油するシューワのタンクローリー(写真提供:シューワ)

奇跡の3万リットル

同社BCP事業部長の中井正隆氏

石油連盟を通じて資源エネルギー庁からシューワへ、九州電力の燃料供給に関する出動要請が出たのは、熊本地震発生から3日後の4月19日のことだった。矢野氏が要請を受託した後、同社BCP事業部長の中井正隆氏は即座にタンクローリーの出動オペレーションを開始。20日にはローリー4台、スタッフ4人体制を緊急配備し、九州電力の高圧発電機車への給油を即時に開始した。

高圧発電機車とは、エンジンで電気を自家発電し、破損した送電線に直接電線をつないで電力を供給する車だ。しかしこの車両は1時間に100リットルもの燃料が必要になる。その発電機車が全国から最終的には162台駆けつけることになるのだが、その燃料消費量は莫大なものになるのは想像に難くない。

同社は、冒頭に記述した益城町に隣接する菊陽町に配備していた備蓄拠点の燃料を、全て九州電力専用の供給基地とすることに決め、対応にあたった。実は菊陽町も震度5強の地震が発生していたのだが、地下タンクだったため設備は無事で、停電も発生していなかったという。そのため同社は、初日の20日だけで発電機車向け給油約14キロリットルの配送を約100 ヵ所で実施することができた。

矢野氏は「菊陽町は熊本市にも空港からも近く、燃料の備蓄基地として最適だったという理由から配備していたが、実は九州で燃料備蓄基地はこの1カ所のみ(※博多に燃料備蓄協力店はあった)。災害で道路が通れないところも多かったので、今回のように被災地に40分で行けるような近いところに自前の備蓄基地があったのは不幸中の幸いだった。あの位置関係は九州電力も驚いていた」と話す。

さらに、現地には給油量が少なく、給油速度も遅いミニタンクローリーが多かったため同社の福岡油槽所から大型タンクローリーを調達。最終的な車両台数は大型タンクローリー2台と現地対応型小型ローリー12台の計14台に上った。28日の電力復旧作業終了までに100キロリットルに及ぶ給油を実施することができたという。