「リスク対策.com」VOL.56 2016年7月掲載記事

本社で調整にあたったイオングループ総務部長の津末浩治氏
国内小売業最大手のイオンは、熊本地震で店舗が使えなくなりながらも屋外駐車場などで販売を続けるとともに、イオン九州、マックスバリュ九州、イオン本社からの迅速な支援により、早期に店舗での営業を再開させた。自治体からの要請に対しても、これまで積み重ねてきた訓練の経験を生かし、震災直後から物資を被災地に送り届けた。

 

地震発生後に店に駆けつけ対応にあたったイオン九州 中九州事業部長の野上尚良氏(右)と現地対策本部で収集にあたった社長室長の金内繁幸氏(左)

イオングループは、熊本県内に総合スーパー(GMS)7店、スーパーマーケット21店、ホームセンター2店、ワイドマート2店、イオンバイク3店を持つ。このうち県下最大のショッピングセンター「イオンモール熊本」内にあるイオン熊本店では、地震発生時、店舗は営業中で、商品が倒れるなどの被害が出たが、店長が中心となり顧客の安全確認と駐車場への避難誘導を行い、余震で帰れない顧客のために駐車場を開放するなどの対応をとった。地震発生後に店に駆けつけたイオン九州中九州事業部長の野上尚良氏は「落ちてきた物が肩に当たったというお客様が1人出ただけで、他にお客様にケガはありませんでした」と当時の状況を説明する。

一方、千葉市美浜区にある本社では、地震発生30分後には副社長をトップとするグループ全体の対策本部を立ち上げ、ほぼ同時に福岡市にあるイオン九州など九州のグループ会社3社が現地対策本部を立ち上げ、安否確認や被害状況の確認を進めた。テレビ会議を通じて状況はリアルタイムで共有された。

対象エリアに安否確認

イオングループでは、2011年の東日本大震災以降、全グループの社員、パートタイム、アルバイトなどを含む40万人以上が登録できる安否確認システムを独自に開発し、その運用方法について研究・訓練を積み重ねてきた。震度を基準にした安否確認メールの自動配信方式では、地震以外の災害や、今回の熊本地震のように余震が多いケースでは柔軟に対応できないことも考慮し、あくまで対策本部が対象エリアやタイミングを決定した上で、配信を実行することにしている。14日の前震では、対策本部が立ち上がってから約20分後に熊本と長崎を対象エリアに安否確認メールを配信することを本部・現地の対策本部間で決定し、同地域で働く約5500人に対して配信し、安否確認を行った。

イオン熊本店を含む県内の店舗には、大きな被害はなかったが、フェイスブックやツイッターなどのSNSで「イオンモール熊本が火災で燃えている」というデマが流れた。当時、イオン九州本社内の現地対策本部で情報収集にあたっていたイオン九州社長室長の金内繁幸氏は、「一瞬焦りはしたが、店舗はすぐに『そのような事実はない』という確認がとれ、冷静に対応が進められた」と振り返る。

ただし店内では、陳列棚が倒れたり、一部商品が崩れ落ちるなどの被害が出ていたため、イオン熊本店では、翌日は店を閉め、屋外の駐車場で食料品などの商品を中心に販売を継続させた。

そして、16日未明に本震となる揺れが再び熊本を襲った。市内全域が停電になる中、店長と野上氏はイオン熊本店に駆けつけた。「暗くて状況が確認できなかったが天井が落下し、スプリンクラーの配管が折れて床は水浸しになっていた」と野上氏。14日の前震とは比べものにならないほどの被害が出ていることは明らかだった。

千葉市の本社、福岡のイオン九州でも、再び夜中にもかかわらず対策本部要員が集まり、安否確認、被害状況の把握にあたった。

イオン本社に設置された災害対策本部の様子(写真提供:イオン)