オリンピック対策は 2000 年問題に似ている
期間中は夏休みをとらせる

投資銀行の BLME (Bank of London and the Middle East) 情報セキュ リティ責任者の William Purdy 氏は、オリンピック対策の現状について、 コンピューターの 2000 年問題と似ていると表現する。同社の懸念するリ スクと、対策について聞いた。

Purdy 氏は、 「2000 年問題の時は、 たくさん準備をしてみたが何も起こら なかった。今回も、本当に何が起こる かはわからないが、準備はしなくては いけない」と語る。  

ただし、問題としては人的な面と、 交通に集約されるとする。 「ロンドンの ような小さな町に、世界中から人が集 まってくるのに、交通は地下鉄を見て わかるように脆弱すぎる」 (同) 。  

同社では、交通手段が使えず従業員 が仮に出社できなくても在宅から仕事 ができるように専用のセキュア VPN に よるリモート環境を整えている。回線 速度が遅くなる可能性もあるので、重 いファイルは事前に自宅の PC などに メールしておくよう指示をしていると いう。これはオリンピック対策に限っ たことではなく、日常から行っている ことだとする。  

業務用の通信環境は、金融向けに設 けられている特別なもので、一般と違っ て、オリンピックだからといって回線 が混み合う可能性はほぼないようだ。 それでも、万が一に備え、DR サイトは いつでも立ち上げられるようにしているし、支店に移動して、業務を継続さ せる方法など、いくつか BCP を備えている。  

社内ネットワーク環境への対策としては、回線への負荷を考慮して、PC で ビデオストリームを見ないように指導 をしている。ただし、実際には回線の 負荷は常に監視できているので、誰かが PC でテレビを見ているからといって、それにより回線が落ちることはな いそうだ。  

Purdy 氏によれば、交通の遅延や停 電、通信のトラブルはロンドンでは決 して珍しいことではない。こうした問 題には、すでに十分な対策を講じてき たとする。あとは「オリンピックにお けるリスクを詳細に検討し、それに対 して不足しているものがないかを網羅 的にチェックして、従業員の理解をしっ かりと得るだけ」 (同) 。  例えば、オフィスの文房具やコピー 用紙が手に入らない、あるいは昼食が 買えないという問題。同社では、オリ ンピック期間に備え、地下の在庫スペー スに事務用品などの買い置きをしてい る。  一方、同社特有の問題もある。BLME はイスラム系金融機関で、従業員には 中東の人が多い。オリンピックとラマダーンの時期が重なるため、同社では、社員に対してオリンピック期間中はな るべく夏休みを取るように推奨してい る。 「もともとビジネスがスローダウン する時期で、人手不足は心配していない」という。  

同社は、個人を対象にした小売銀行 (リテイルバンク)ではなく、投資銀 行(インベストメントバンク) 。万が一、 事業が止まっても多くの市民に直接影 響を与えるようなことはない。ただし、 顧客からの信頼と、社会的な信用を落 とさないため、顧客への期日内の支払 いと、入金を止めないことを最重要業 務として定め、BCP を常に改善してい るとする。  

Purdy 氏は「オリンピックへの対策 は、あくまで通常の BCP の延長でしか ない。今までの計画に、オリンピック がもたらす具体的なリスク・シナリオ をあてはめるだけ」と話している。