東日本大震災におけるアスベスト

東日本大震災震関連について話します。現地に入りアスベストの関連調査をしてきました。アスベストの含まれた波板スレートを使った建物が非常に多かったです。注意喚起のために地図上にプロットして公表していました。石巻の港湾地区で波板スレートを使った建物を160棟ほど見つけました。吹き付け材は思ったより少ないですが、スレート板は大量に残っていました。

建物の解体工事の管理もずさんでした。「アスベストを使用していません」と書いてあってもすぐに見つかるような状態でした。大量の解体工事を一気にやるので、しかたのない面もあると思いますが、大量のアスベスト含有建材が放置されているという状況が続きました。再生砕石の中にもアスベストが入ってきていました。写真のように解体後の更地で気中濃度測定すると車で走ったり、人が歩いたりすると舞い上がって飛散していました。このような場所がたくさん広がっています。

困難な状況の中で自治体も非常に頑張っていました。例えば散水車の貸与や解体業者の教育、アスベスト含有建材の簡易判別法の実施、モニタリングなどの優れた事例もたくさんありました。ただしレベル3、例えば廃棄物中のアスベストを把握している自治体は半分ほどで、把握していない自治体が4割ほどでした。自治体が発注した解体工事の中でも7割8割くらいの自治体がレベル3のアスベストの対応ができていなかった。これは、当然と言えば当然で、津波被害を受けた市町村の中で大気汚染防止法が定める政令市、つまりアスベストがわかる職員がいるのは岩手県宮古市、宮城県仙台市、福島県いわき市の3つだけだからです。

厚労省の調査では被災地のレベル1または2の現場で80件のうち13件、16%でアスベストが漏洩している。そういった事例も明らかになりました。やはり東日本大震災でいろいろな問題があった。

では熊本地震ではどうだったのか。今のところ熊本市と県が、私たち建築物石綿含有建材調査者に委託をして大規模な建物調査を実施し、初期段階ですが危険な建物を14棟見つけました。もうひとつは環境省が石綿の事前調査を徹底しろと通知を出した。これは画期的なことで、東日本大震災の時は通知が出ませんでした。国も自治体もアスベストの危険性を意識しているとうかがえる出来事です。

まとめると、アスベストは発がん物質であるということ。これはやはり忘れないでいただきたい。これが基本です。調査、分析、管理、除去、廃棄をそれぞれで適切に管理しないと被害が広がってしまう。法整備も足りず、対策は未完です。リスク管理という発想で是非、どこまで対策すればいいのかということも考えて
頂きたいです。

(了)