2、ペット止血法の基礎知識

人間と同じように止血法は部位によってさまざまですが、基本コンセプトを知っておくことで、それぞれに応用できると思います。

【犬猫の血液量】
人間とほぼ同じく、体重の7〜8%で急激に20%を失うとショック症状が起こり、30%を失うと生命に危険を及ぼす可能性が高くなると言われています。ただし、子犬や子猫の場合は3〜5%でもショック状態に陥ることもあります。

【ショック症状】
体内を循環する血液が急激に失われることにより、重要臓器や細胞の機能を維持するために必要な血液循環が十分得られずに発生する、種々の正常ではない状態をショックと言います。

ショック症状が進行すれば、徐々に重要臓器の低酸素症をきたすため、正常な細胞代謝を傷害する悪循環に陥って臓器不全が発生し、死に至る危険もあります。出血性ショックの場合、脈拍は弱く早くなります。

また犬は感受性が強いため、飼い主の死や花火などの爆音、急激な恐怖など精神的なショックによっても心肺停止するほどのショック状態になることもあるそうです。

【動脈性出血】
動脈性出血は強く吹き出すような出血で、鮮血が脈打つように噴出するため、ためらわず緊急な直接圧迫止血が必要です。

また四肢の轢断など短時間に大量の出血が予想される場合は、轢断部の保護と止血処置と同時に腋窩動脈、大腿動脈などの動脈圧迫止血や止血帯による処置も有効。

ただし、止血開始時間を記録しておき、ペットの体重に応じて健康な組織が壊死しないように約30分に1回は血流を促すこと。

【静脈性出血】
静脈性出血はじわじわと湧き出るような出血で、赤黒い血液が持続的に湧き出るように出てきますので、ガーゼなどによる圧迫止血と包帯などによる圧迫箇所の固定を行わなければ徐々に大量出血となり、ショック状態にもなり得ることがあります。

【毛細管性出血】
擦過傷などによる薄くにじみ出るような出血ですので、アルコールなどによる殺菌とガーゼによる傷口への感染症予防を行います。

【止血法の対象】
出血が認められても、反応や呼吸が普段通りでなければ救命処置を優先します。そして外出血や大出血を認めた場合は、他の救助者により直ちに止血の処置を行います。止血の方法は、直接圧迫法を行います。

【止血の方法】
直接圧迫止血法をおすすめいたします。

【出血部位を抑える材料】
滅菌ガーゼや三角巾、滅菌タオル、包帯、伸縮包帯、テープなど。

【圧迫の行い方】
出血部分にきれいなガーゼやタオルなどを重ねて当て、その上から手で強く約3分ほど圧迫します。必要に応じて、片手、両手、体重をかけて圧迫して止血を行います。

【血液感染予防】
ペットから人への血液感染はまれですが、万が一に備えてディスポーザブル手袋などで感染防止を行ってください。手袋がなければコンビニなどでもらう買い物袋でも効果があります。

いかがでしたか?

ペットセーバーの「ペットの救急講習」のなかで、よく質問を受けるのがペットから人への感染症についてです。皆さんがよく耳にする犬から人間への血液感染症の代表的なものは狂犬病ですが、日本ではまず考えられないようです。

■狂犬病:厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/

その他、犬以外の動物たちからの動物由来感染症については下記を参考にしてください。

■動物由来感染症:厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou18/index.html

ペットの救急法は人間の救急法と手順も処置も似ていますので、覚えやすいと思います。

ぜひ、思い切って助けてあげてくださいね。

■おまけ(笑)

出典:YouTube: ♥Cute Dogs and Cats Doing Funny Things Compilation 2016♥

(了)



ここにご紹介したコンテンツは、私がインストラクターとして所属している2つの団体、アメリカ最大のペット救急法指導団体であるPetTechのThe PetSaver™ Program、そして、消防士のためのペット救急法指導団体、BART(Basic Animal Rescue Training)ら出典しています。

PetTech
http://www.pettech.net/

BART(Basic Animal Rescue Training)
http://basicanimalrescuetraining.org/

BARTのブログで紹介されました。
http://goo.gl/ZoJoX6

ペットセーバー:
http://petsaver.jp