発会式で事業計画を説明する鍵屋氏

福祉施設と、そこで働く職員の災害対応能力の向上を支援することを目的に、一般社団法人福祉防災コミュニティ協会が11月25日に発足した。会長には、元宮城県知事で神奈川大学特別招聘教授の浅野史郎氏、代表理事は跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授の鍵屋一氏が就任した。

協会の目的は、福祉施設、職員の災害対応能力の向上と平時からの魅力増進。具体的な事業としては、①福祉人財と組織の災害対応能力の向上、②福祉防災認定コーチの養成、③安全・安心・魅力施設の認定、④福祉防災コミュニティづくりと維持・発展、⑤福祉施設の魅力増進(発掘)、⑥災害時の応援―を掲げた。

このうち、①については、福祉施設の防災・事業継続計画(BCP)研修や訓練を実施し、継続的なフォローアップを実施する。②については、福祉防災・BCP研修や福祉施設の防災対策を支援できる人財を養成する。③については、福祉防災・BCPを作成し、訓練、見直しなど良好なマネジメントができている福祉施設を認定する、などの活動を予定している。

同協会によると福祉施設は防災訓練を定期的に行っているものの、大災害での緊急避難や地域・社会への貢献まで視野を広げた本格的な危機対応には至っていない。実際に2013年3月の内閣府調査によると福祉施設のBCP策定率は4.6%と、全産業中、最も低かった。一方で、近年の大規模地震や水害など、危機対応を迫られる機会は増え、同時に近隣の要配慮者を受け入れる福祉避難所(第二次避難所)となることも求められている。

鍵屋氏は25日に都内で開かれた発会式のあいさつで、内閣府が2013年にまとめた「避難に関する総合的対策の推進に関する実態調査結果」について触れ「東日本大震災では、要援護者がどのような情報をもとに避難したかを聞いたところ、最も多かったのが家族など同居している人の判断で、次いで近所の人や友人など面識のある人からの連絡や声かけ、3位が福祉施設や福祉団体の職員、ケアマネージャー、ヘルパーなどからの連絡や声かけだった。東京では近所の力が弱いので、首都直下地震などに備え、ますます福祉関係者の力が必要になる。高齢者や障がい者が普段から、近所や福祉施設とつながりを持っていることが非常に重要」と語った。

協会顧問には、顧問には和洋女子大学学長の岸田宏司氏、東京都福祉施設士会会長の高橋紘氏、同志社大学社会学部教授の立木茂雄氏、明治大学大学院政治経済学研究科特任教授の中林一樹氏、防災科学技術研究所理事長の林春男氏、東京都市大学客員教授の原口兼正氏、兵庫県立大学防災教育センター長の室崎益輝氏、東京大学大学院生産技術研究所教授の目黒公郎氏が就任した。

鍵屋氏の話

東日本大震災では、要援護者の守り手である自治体職員や消防隊、民生委員、福祉施設の職員の方々の多くが犠牲になられた。支援者の危機管理力が弱いことは大きな教訓で、南海トラフに向けてこの教訓を生かして取り組んでいかなければいけない。しかし、海岸近くの福祉施設の多くが、地震発生時に逃げるのか、とどまるのか、一緒に逃げるのか、具体的な行動計画すらいまだに決まっていない。津波が目の前に来たら逃げるのでは遅い。見えない津波から逃げられるように備えなくてはいけない。それなのに、ほとんどの福祉施設があきらめてしまっている。この協会によって、1人ひとりの福祉施設の職員が、自分の大切な命や家族の命、そして福祉施設にいらっしゃる入居者の命を守っていけるようにしたい。


(了)