大規模地震に留まらず、津波、原子力発電所の事故など、複合型の災害となった東日本大震災。迅速な判断が求められる中、政府の対応の遅さが大きな問題となった。日米の危機管理体制に詳しい元米連邦緊急事態管理庁(FEMA)危機管理専門官のレオ・ボスナー氏は、日本の災害対応の課題と提言をまとめた。
 
11 の課題
1.日本政府は、大災害に対応する現実的で総合的計画を持っていない

日本政府の災害対応計画は、縦割りの省庁の個別の計画によって成り立っている。これらの計画は、幾度も被災現場の状況把握や処理対応において失敗を招いた。原因の1つとして、政府内に訓練を受けた実務経験のある災害対応の専門家が不足していることが挙げられる。その結果、3 月11 日における政府の対応はうまくいかず、多くの人が、必要以上に苦しんだ。例えば、下記の問題は常に報告されていた。

 
 
 
  • 食糧や薬など物資不足に苦しむ地域がある一方、 必要としない地域に多くの物資が配達されていた。
  • 多くの寄付は、政府の支援物資の受け取りの管理能力不足によって拒否された。
  • 現場の医療従事者からの緊急の要求に対して回答が出せなかった。
 
2.日本の多くの都道府県、市町村も、総合的な災害対応計画を作成していない
災害対応を求められる日本の都道府県や市役所の職員は、政府からほとんど何も災害対応の訓練を受けていない。その結果、多くの地方自治体の職員は、震災時に何をすべきかわからず、正確に地域の要求を見極めて対応することができなかった。
 
 
3.インシデント管理体制の欠如が招いた資源管理の混乱
大規模災害の対応について、私が取材した救援部隊の人達は、災害の最中に自分たちで管理体制を作り上げなければいけなかったと語った。被災地域に散らばった多くの生存者に、省庁管轄をまたいだ多様な奉仕活動をまとめ、提供しようとした。救援部隊が災害の最中に、管理体制を整えようとしたことが最善の対応方法とは思えない。

4.ボランティア、寄付、NPO を最大限に活用していない政府
政府は、災害対応にNPO や寄付を管理する計画を持っていない。その結果、NPO はどの地域で何が必要なのか、政府からのアドバイスなしに、各自の判断で(または個人的なつながりに頼って)援助を送り出してしまっている。さらに生存者がまさに必要とする時に、食料などの必需品は、政府によって受け入れを拒否された。物資が不足する地域がある一方で、不必要な救援物資が多くの地域に押し寄せ、食料と薬品の過剰な供給を招いた。
 
5.政府と現場の救援部隊のコミュニケーションが一方通行
医師や薬剤師、災害時における公衆衛生の専門家など、現場の救援部隊は、必要な支援を政府に伝える効果的な手段を持っていなかった。 一方、政府は、被災状況の情報収集の多くをニュース報道に頼りきっていたように思われる。このコミュニケーション不足と情報不足により、現場で必要とされる物資を把握できず、上記の4番目で指摘したような、食料や医薬品などの資源の誤った分配を招いた。
 
6.避難施設の管理・運営体制の不備
避難施設の多くは、「被災者による自己管理」もしくは「全く管理されていない」状態だったと言われている。地元住民は、自力で避難施設の運営・管理した。政府から避難施設の運営についてアドバイスはなく、運営が非常にうまくできた施設と、全くうまくいかない施設に分かれた。
 
7.毎日米、パン、水だけだった生存者の貧しい栄養面の対応
栄養不足と被災によって体力が弱まっていた多くの生存者の状況は、簡単な栄養補給の計画で避けることができただろう。医師の中には、栄養不足が、高齢者を死に至らせたのではないかと指摘する人もいる。被災者の栄養を満たす効果的な計画が何もなったように思われる。
 
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