2016年6月に実施された英国におけるEU離脱に関する国民投票の結果を受け、世界中で株が暴落した

近年における世界情勢は、政治、経済、社会、全ての面で流動化しています。2017年に顕在化するであろう10のリスクを、以下の通り予測しました。前回に引き続き、一つずつ解説を行います。

【2017年グローバルリスク予測】

1.    グローバリゼーションの更なる進展と世界的な社会的不安の拡大
2.    欧州諸国における右傾化傾向の高まり
3.    国際機関の更なる機能低下
4.    中国情勢の不安定化
5.    朝鮮半島情勢の緊張化
6.    中東情勢の不透明化
(シリア・イラク・トルコ・サウジアラビア・イラン等)
7.    米国の国際的なプレゼンスの低下
8.    ロシアの孤立化
9.    Homegrown Terrorist/Lone Wolf Terroristによるテロの増大
10.    自然災害の増加・新たな感染症の発生


【予測されるリスク】
・欧州諸国における極右政党の更なる台頭
・欧州諸国政府による大衆迎合的な政策の増加
・欧州諸国における民族的・宗教的対立の拡大・激化
・欧州地域における大規模テロ事件発生の可能性 等

【背景等】
近年におけるEUの経済状況の低迷、一部の国における失業率の高止まり、更に、最近の欧州におけるテロ事件の頻発等、これらの状況に対する欧州各国政府の政策面での対応が後手々々になっている傾向が顕在化しています。

このような状況の中で、欧州においては政治不信の傾向が拡大しています。例えば、欧州議会選挙の投票率は実施されるごとに低下している状況です。また、近年のICTの進展等により、欧州等においても、政治家等のネガティブな情報が入手しやすくなったことで、市民の間で、より大きな変化への関心が高まっている傾向も見られます。

特に、外国人(移民)への排斥を標榜する政党(極右政党等)が近年台頭しており、最近における欧州における選挙では、躍進が目覚ましく、これらの政党が欧州の複数の国で政権与党となっている状況です。ちなみに、現状において、外国人 (移民)排斥・民族主義を標榜する政党が政権与党となっている国としては、ポーランド(法と正義)、スイス(国民党)、フィンランド(真のフィンランド人)、ノルウェー(進歩党)が挙げられます。なお、下記は近年における選挙の結果及び2017年の選挙の予定です。

2014年5月欧州議会選挙(751議席)
フランス:国民戦線(FN)23議席(74議席中:得票率24.95%)(第1党)
オランダ:自由党(PVV)4議席(第3党)
デンマーク:国民党(DF)4議席(第1党)
ギリシャ:黄金の夜明け(Golden Dawn)6議席(第1党)
オーストリア:自由党(FPO)4議席(第2党)
フィンランド:真のフィンランド人(PS)2議席(第3党)
ハンガリー:ヨッビク(Jobbik)3議席(第2党)

2015年の欧州における総選挙での極右政党の躍進
ポーランド:2015年10月
スイス:2015年10月
デンマーク:2015年6月
フランス:2015年12月(地方議会選挙)

2017年に予定されている総選挙等
3月:オランダ総選挙
3月:ドイツ大統領選挙
4~5月:フランス大統領選挙
6月:フランス総選挙
9月:ドイツ総選挙
9月:ノルウェー総選挙
10月:チェコ総選挙


ちなみに、2016年においては欧州主要国で総選挙はありませんでしたが、2016年6月に実施された英国におけるEU離脱に関する国民投票では、外国人(移民)流入に対する懸念等を背景として、EU離脱(Brexit)という結果となっています。

このような状況では、各国政府は大衆迎合的な政策をとる傾向が強く、そのことが、民族的・宗教的対立を助長する結果となっています。そのことが、場合によっては、欧州における大規模テロの可能性を高めている状況ともなっています。

なお、2017年に実施される総選挙はオランダ、フランス、ドイツ等のEU主要国で実施されることから、極右勢力の台頭がより鮮明となった場合には、政治的にも大きな流動化がもたらされる可能性があります。

(続く)

(了)