出典:J.B. Forbes/St. Louis Post-Dispatch

もし、凍った池に犬が落ちているので助けて欲しいという通報が入ったら、現場到着までに、まず救助車積載器具のどの装備をどのように準備しますか?

さらに、凍った池に落ちた犬を助けに行った飼い主も一緒に落ちていた場合、どのように隊員を配置し、救助しますか?

今回の内容はアイスレスキューですが、大地震などで液状化した地面へ転落したときの救出救助法にも使えるコンセプトだと思います。

まずビデオを見ながら、「自分たちがすでに使っている装備を用いて救出するとしたら?」と想定して、考えてみて下さい。


「Dog Rescue! Dog treated in ambulance for hypothermia!」(出典:YouTube)

上のビデオで興味深いのは、レスキューベルトではなく、12mmのナイロンロープをフローティングチューブ(500円くらい)の中央の穴に通して作った、手作りレスキューベルトを使っていること。

ヘリコプターのホイストで使うフローティングレスキューベルトだと、数万円しますが、このアイスレスキューで使ったベルトであれば、普通の小綱を含めて1000円くらいで作れてしまう。

ヘリコプターで吊り上げる事もなく、凍った池の上を滑らながら引っ張ったり、シャーベット状の水面を引き寄せたるするだけですので、手作りのものでも十分かもしれません。

犬を励ましたり、救急車の暖房を最高にしての保温の準備や、低体温症のケアもとてもスムーズに対応しています。

犬が仰向けに抱かれるのを嫌うのもわかります。理由は、仰向けに抱かれると呼吸が苦しくなり不安になる犬が多いからだそうです。

次のビデオでは、アイスレスキューにはかなりの体力が必要なことがわかります。


「Raw: Firefighters Rescue Family Dog in Icy River」(出典:YouTube)

アイスレスキュー用のスーツでなくてもドライスーツで代用できると思いますが、窮屈で動きにくいのと首も絞まるため息が上がると苦しいかもしれません。できれば、5mmのウェットスーツにダイブブーツで十分なような気もいたします。

このように消防局によって、同じアイスレスキューでもさまざまな装備を使って工夫をしているのと、ヘリやクレーンを使う方法まで、とてもユニークで面白いですよね。

下記のリンクをクリックするといろいろな道具を使ったアイスレスキューを見ることができます。

■各種アイスレスキューの手法
https://www.youtube.com/results?search_query=ice+rescue+dog

アイスレスキューマニュアルを探していたところ、U.S. Coast Guardのアイスレスキューマニュアルを見つけました。おそらくですが、アメリカの消防レスキュー隊もこのマニュアルの内容を参考にしていると思います。写真も多くわかりやすいですよね。

■Ice Rescue Operations (IROPS) Tactics, Techniques, and Procedures (TTP)
https://www.uscg.mil/forcecom/ttp/pubs/CGTTP_3_50_1B_IROPS.pdf

以下、平均的なアイスレスキューの装備と手順です。

1、 現場到着時に必要なもの(最低限)
出動隊:ポンプ車x1台2名,救助車x1台3名、救急車1台x3名
・現場到着までにドライスーツかウェットスーツ着用:隊員3名
・バスケットストレッチャーx1
・30mロープx4本
・小綱4本
・ヘルメット
・縛帯
・フローティングベルトx1(なければホース等代用)
・毛布x3
・酸素供給準備、暖房準備
・ヒートパット(頸動脈、腋窩動脈、大腿動脈を温めること)

2、  アイスレスキューに向かう隊員の装備と判断
・転落場所までのアプローチは氷の状態や水底までの深さにもよるが、シャーベット状の時はかき分けていくため一番体力を使う。


「Coast Guard Rescues Cute Dog From Icy Water」(出典:YouTube)

・できるだけ、体重の軽い隊員が救助に行き、体重の重い隊員が陸上でロープを引く方がスムーズに行く場合が多い。なお、ロープは手だけで引かず、体を使うこと。

・ドライスーツの上に陸から引っ張ってもらうため、胸部裏表にXハーネス、または、チェストハーネスを小綱で作り裏表ともカラビナを付ける。

・または、胴に付ける救助縛帯を胸に付ける。※胸に付ける理由は、救助者側も引っ張りやすく、救助される方も引っ張られやすい。また、スムーズに氷面を滑りやすいため。

・溺れかけている動物を抱いて救助される場合は背中側のハーネスについたカラビナにライフラインの救助ロープを付けて仰向けの状態で背中を滑らせる。

・溺れかけている動物がおとなしく、氷面が硬い場合は、バスケットストレッチャーに載せて静かに引き寄せる。陸側のロープを引く隊員が十分な場合は救助者が犬を抱いたままバスケットストレッチャーに載って救助されることも可能。

・溺れかけている動物に咬まれる恐れがある場合は、無理をせず、バスケットストレッチャーに毛布を敷いて小綱で固定し、スロープを作って、自力で這い上がらせる。氷面に上げたら陸から呼び寄せる。

次のビデオでは2名の隊員が溺れている犬に咬まれています。このような動物の場合は、12ミリのロープで編んだネット、編み目3cm、縦横2mくらいのネットを使うといいかもしれません。


Dog ice rescue wmfd co4(出典:YouTube:)

3、 溺れかけている動物と飼い主の場合は、飼い主と動物を一緒に救助するのが理想的。一度に困難な場合は、飼い主を優先する。

4、 陸上まで救出した後はすぐに水分を拭き取って保温し、暖房の効いた車内へ搬送し、飼い主に獣医への搬送を依頼する。飼い主が低体温症になっている場合は、すぐに救急救命病院へ搬送する。

5、 ペットが歩ける場合の時には、犬の体にロープで2重舫い結びを作成し、飼い主に引き渡すまで保護するか、他の関係機関に引き渡す。

今回は以上です。

ペットレスキューは、「搬送をどうするか?」「飼い主がいない場合はどうするか?」など、細部の救命活動までがマニュアル化されておらず、まだまだ解決しなければならない課題が多いと思います。

どうぞ、みなさんの消防署でイメージレスキュートレーニングしてみてください。

助かる命が助かりますように!

(了)