1890年に創業し、120年以上の歴史を誇る世界有数の保険会社である Allianz(アリアンツ/独) は、2017 年 1 月 11 日に「Allianz Risk Barometer 2017」という調査報告書を発表した。これは同社の法人顧客やブローカー、リスクコンサルタントなどを対象として実施したアンケート調査に基づいて、今後警戒すべきリスクのランキングをまとめたものである。

この調査は今回が 6 回目であり、今回の調査は 2016 年 の 10 月から 11 月にかけて行われ、55 ヶ国の 1237 人から回答を得ている。

全体の集計結果からトップ 10 は次のようになっている。なお 1 位の「事業中断」は 5 年連続でトップである。

1. 事業中断(37%)
    (サプライチェーン途絶などを含む)

2. 市場の変化(31%)
    (相場の乱高下や競争の激化、M&A、不況など)

3. サイバー・インシデント(30%)
    (インターネットでの犯罪や IT 障害、データ漏洩など)

4. 自然災害(24%)

5. 法律や規制の変更(24%)
    (行政における変更、経済制裁、保護貿易主義など)

6. マクロ経済の変化(22%)
    (緊縮財政、商品価格の上昇、デフレ・インフレなど)

7. 火災、爆発(16%)

8. 政治的リスクおよび暴力(14%)

    (戦争、テロリズムなど)

9. レピュテーションやブランド価値の毀損(13%)

10. 新しいテクノロジー(12%)
    (相互接続性の増加による影響、ナノテクノロジー、AI、3D プリンター、ドローンなど)


トップの「事業中断」については様々な要因が含まれているため、その内訳も示されている。事業中断の要因として最も多いのは「火災・爆発」(44%)と「自然災害」(43%)だが、本報告書では「サプライヤ側の事業中断」(33%)や「サイバー・インシデント」(29%)といった、自社における物理的な損害を伴わない要因(non-damage events)によるものが増加傾向にあることに注目している。

なお報告書本文には、地域別、業種別、企業規模別のランキングや、過去のランキングとの比較も示されており、それらの結果に対して分析やコメントが加えられている。例えば地域別(アフリカおよび中東/南北アメリカ/アジア/ヨーロッパ)のランキングを見ると、「事業中断」が 1 位になっていないのは「アフリカおよび中東」のみである。また、すべての地域でトップ 5 に入っているのは「市場の変化」と「サイバー・インシデント」のみである。

一方で企業規模別では、小規模企業(年間売上高 2.5 億ユーロ未満)において「サイバー・インシデント」が 6 位となっているが、この点については、小規模企業においてこの種のリスクが過小評価されているうえ、これらに対策を講じるリソースもないため、もし実際にサイバー・アタックの標的になった際には致命傷になりうると指摘されている。

報告書は全体的にグラフや表を中心にシンプルにまとめられていて読みやすく、これから警戒すべきリスクの傾向が世界規模で掴めるので、ご一読をお勧めしたい。

■報告書本文の入手先(PDF 20 ページ/約 3.3MB)
http://www.agcs.allianz.com/insights/white-papers-and-case-studies/allianz-risk-barometer-2017/

(了)