1、 排煙要領と重要ポイントについて

通常は火災対象物のすべての窓を開放して排煙しますが、それには目的と順番があります。まず、排煙の目的は下記の3つです。

① 開口部の開放により煙の誘導を行って視認性を高め、逃げ遅れた要救助者の避難と消防隊の活動を容易にすること。
② 酸欠や有毒ガスなどの危険要因を取り除く。
③ フラッシュオーバーなどの急激な燃焼拡大の予防

※はしごを掛けて2階まで展長し、開口部を破壊するまでに要する時間は約3分以内が理想です。


排煙時の重要ポイントは、1階部分の窓などの開口部は簡単にアクセスできると思いますが、右利きの消防士が多いため、基本的には開口部の左側から窓を破壊した瞬間にフラッシュオーバーなどの急激な燃焼を伴う現象によるやけどを予防する必要があります。そのため、顔を左に向けながら左側の壁に身を避ける癖を身につけることが重要です。

2連ばしごで2階部分を排煙する窓などの開口部を破壊するときは、まず、空気呼吸器の面体を着装した状態で破壊対象開口部の左側に梯子を掛け、進入しやすい高さに設定します。

次に窓を割る前に内部の様子が確認できるようであれば、左の壁に隠れるような形で内部状況を観察し、下で梯子を確保している隊員に窓を破壊することを告げ、梯子の内側ではなく、外側からの確保を確認後に窓を破壊して進入準備を行います。

もちろん、このとき破壊箇所内部の火勢を強く感じたり、黒煙が吹き出してくる場合や要救助者が排煙しようとする開口部のある部屋にいる可能性が高い場合などは、噴霧放水して開口部を覆いながら排煙活動を行います。理由は、開口部を開放したことにより火勢と黒煙が開放部へ向かってくるため、要救助者が居た場合には危険だからです。

FIRECRAFT PRODIUCTIONS (出典:Youtube)

2、建物進入要領と重要ポイント

 


まず、玄関以外の開口部から建物への侵入が可能な条件は下記の通りです。

① 要救助者が逃げ遅れており、早急な救出が必要な場合。
② フラッシュオーバーを予防したと確認できた場合
③ 床や壁、天井が焼け落ちていない状態で瓦なども落ちてこない状態を確認できた場合
④ 放水準備が整ったことを確認できた場合


一般的にほとんどの場合、排煙した同じ開口部から進入します。内部進入する開口部に多くの選択肢はないと思いますが、できるだけ燃えている場所から離れていて、床が焼け落ちていない場所を選びます。

開口部から進入する際の確認事項は、次の通りです。

① 窓枠に残ったガラスなどを除去する。
② 頭や足から入り、体全体が十分に入れる事を確認。
③ 窓枠の真下などに要救助者が居ないかを確認。
④ 床が抜けていないかを確認。