2017/02/08
防災・危機管理ニュース
被災や人口減少を見据えた数十年後の街の姿は?
市街地を撤退させる方法
廣井氏は現在、この手法を南海トラフ巨大地震で大規模な被害が予想される西日本の太平洋側の地域や、首都圏を流れる荒川や利根川の流域などを対象とした街づくりに応用できないか研究を進めている。
「危険な場所に住んでいる人たちを、危険じゃない場所に移動させるためにどうすればいいかということが、実は日本の都市計画の中でこれまで議論されてこなかった。現状の都市計画は、基本的には開発規制の方法ばかりを定めており、どのように市街地を撤退させるか、撤退させる時にどういう人をどこにどう動かすかという方法論がない」と廣井氏は指摘する。
その上で、人口減少を踏まえコンパクトな街づくりを目指すとすると、市町村単位だけで解決できる話ではなく、周辺市町村や場合によっては県境を越えた地域での議論が不可欠になるとする。
一方で、こうした広域の議論だけでは、住民は参加しずらく、参加しても合意形成を得ることはなかなかできないため、廣井氏は広域のワークショップと併せて、市町村より小さな地区単位でも、同じようなワークショップにより事前復興の議論を進めることを新たな研究テーマに据える。
地区防災計画と連携させる
2014年4月に創設された地区防災計画制度では、地域コミュニティにおける共助の防災活動を推進していく観点から、市町村内の一定の地区の居住者および事業者(地区居住者等)が行う自発的な防災活動を地区防災計画として規定することができるようになった。
「地区単位で事前復興の議論を進めていくことで、その地区内では解決できないことがあぶりだされ、そのことにより広域で解決すべきこと、地区で解決できるもののすみわけができるようになるはず」と廣井氏は語る。
廣井氏は「これまでの防災は建物の耐震化や家具類の転倒防止など、目先の対策が多く、数十年先という長期的な対策はあまり考えられてこなかったが、長期的な街づくりを考えてもらう場を提供する、皆で考えられるツールを開発するためのワークショップ手法を研究していきたい」と抱負を語る。
(了)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方