都内で講演する岡部梨恵子さん

「家庭で備蓄ができないのは、皆さんのせいではありません。実は多くの家の中はモノが多すぎて備蓄する場所がないのです」と話すのは防災・整理収納アドバイザーの岡部梨恵子さん。9日、エレベーターメンテナンス会社i-tec24が主催する防災コミュニティ研究会で講演した。

「実は掃除は企業のBCP(業務継続計画)でも大事なポイントです。しかも100人の会社で1日5分、全員がモノを探す時間に費やしていたら、1年間では約1666時間、費用にすると500万円ほどの損失になるのです」と、企業でも整理・整頓の必要性を強調する。(※年間200日勤務、時給3000円と仮定した場合)

岡部さんはハウスクリーニング業の責任者として7年間でのべ5000軒以上の家の掃除に携わってきた掃除のエキスパートだ。東日本大震災では自宅マンションのある千葉県浦安市で被災。水道が利用できない状況が長く続いたことから、「家庭を守るための備蓄」を真剣に考えるようになったという。

「でもいざ備蓄しようと思ったら、家の中がモノであふれかえっていた。とても家族1週間分の備蓄なんてできないとあきらめかけていた」と当時を振り返る。

そのようななか、断捨離の提唱者であるやましたひでこ氏との出会う。同氏のセミナーで「安心で安全な家にするには、床に物を置かない、いつも部屋を片づけて、すぐに避難できるようにしておくことが大切」との言葉に衝撃を受け、「備蓄をするにはまず家の断捨離から始めないといけない」と考え始めたという。

その後、さまざまな片付けの資格をとり、2013年に開催された出版社が主催する「断捨離祭り」ではグランプリを受賞。現在では「断捨離」と「女性視点での食家庭内備蓄」について全国で講演を行うまでになった。

横並びのローリングストックで家族を守る

岡部さんが家庭で実践する横並びのローリングストック

そんな岡部さんが最近提唱しているのが「横並びのローリングストック」だ。

「本を読むと、『新しいものは棚の奥に。前に出した古いものから食べていく』と書いてあったが、棚の奥にしまおうと思ったら前のものをすべて一度出さなければいけない。忙しい主婦がそんなことができるわけがない」と話す。

新しいものを棚の奥にというけれど・・

ストックを横置きに1日目、2日目と分けて収納すれば、1日で食べる物が誰でもわかる。食べたら箱を横にスライドし、新しいボックスを最終日の次に入れれば楽に備蓄食品を回転させることができる。岡部さんが講演で家に帰れないときには、このストックの中から夫や子供が食材を取り出し、調理しているという。

「今の主婦は働いている方も多く忙しい。防災備蓄の必要性はわかっていても、時間や備蓄場所を作ることが難しいです。そんな人たちが少しでも『簡単に無理のない備蓄』ができるような手助けができれば」と、岡部さんは今日も全国を飛び回る。

(了)