事故やケガ、自殺、災害による被害を減らす街
自分達の安全は自分達で守る!国際基準でコミュニティを認証
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
2017/02/14
防災・危機管理ニュース
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
あなたの街はどのくらい安全ですか?
このような質問を受けたら、あなたはどのように答えるだろうか。「まぁまぁ安全」、「あまり安全ではない」、いろいろな答え方があるだろう。しかし、「安全」とはそもそも何に対して言うのか。「まぁまぁ」「あまり」は具体的に人口の何%ぐらいを言うのか、どのくらいの年齢層についてのことなのか――、人によって、思い浮かべるまちの姿は異なる。こうした異なる安全のイメージを統一の指標で分析するとともに、住民自らが継続的に危険を減らす取り組みを国際基準で認証する「セーフコミュニティ(SC)」制度が世界に広がっている。
「セーフコミュニティ制度」は、事故やケガ、自殺、自傷、暴力、さらには災害などによる人的被害などを減らす取り組みを国際的な統一指標で審査し、認証するというもの。コミュニティとして体系的に取り組むことなどが条件で、日本もすでに14の自治体および区がセーフコミュニティの認証を受け、2つの自治体で認証に向けた活動が進められている。日本では一般社団法人日本セーフコミュニティ推進機構(JISC、代表:白石陽子氏)が認証取得に向けた取り組みを支援している。
セーフコミュニティの定義する危険は、もともとは事故やケガなどの外傷だったが、時代の変化とともに、自殺や自傷、暴力、虐待、さらに自然災害による人的被害などが含まれるようになってきた。「時代とともに定義は多様化しているが、一貫しているのは外的な健康阻害要因によって健康を害することを未然に防ぐということ」とJISC代表の白石氏は説明する。
セーフコミュニティ(SC)の基盤となる取り組みは1975年にスウェーデンにおいて始まったとされる。この年、スカラーボリ郡にあるファルシェーピング市では、すべての年齢層、環境、状況を対象とした包括的な手法によって外傷の発生をコントロールする試みに着手した。「個人で外傷を減らすにはいくら注意しても限界がある。地域ごと安全にすれば多くのケガが予防でき、不必要なケガをしないですむようになるということで、そのモデル都市がつくられることになった」(白石氏)。1978年に外傷に関する記録を開始し翌年に外傷の予防策に着手した。その結果、3年間で就労先・家庭、そして交通に関する受傷は27%も減少したという。この取り組みは周辺の自治体にも広がり、その後ノルウェーやオーストラリアのいくつかのコミュニティでSCへの取り組みが始まり、国を超えたSCのネットワークが誕生した。これまでの実績では、セーフコミュニティの理念に基づき体系的に取り組むことで約25%の外的要因による死亡や受傷は減らすことができることが明らかになっているという。
1986年には、当時、健康課題として外傷に関心を寄せていた世界保健機構(WHO)との協力関係が構築され、1989年にはカロリンスカ医科大学にWHO協働センター(WHO CCCSP)が設置され、SC認証制度が始まった。以来、国や地域を超えてその概念と活動は広がり続け、2017年1月現在で約375のコミュニティが認証されている。2015年からは、WHO CCCSPから独立したセーフコミュニティ認証センターが同制度の運用を行っている。
日本では、2006年に京都府亀岡市がSCに取り組み、2008年3月に国内初となる認証を受けた。以来、SCは日本国内でも広がりはじめ2016年1月現在で16を超える自治体および、一部の区がSCに取り組んでいる。
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