【ストレス軽減法】

・十分な睡眠
・適度な運動
・バランスの取れた食事
・仕事・遊び・休憩の適度なバランス
・人との関わり
・スピリチュアルなものに触れる


このようなストレス軽減法を実践すると同時に、家族や友人たちにも被災者や被災地から帰還してきた救助者に対するケアの方法を伝えるべきである。一方、家族や友人には、相手が話したいときは傾聴し、話したくないときに無理やり話を聞き出さずにそっとしておいてあげる心遣いを事前に理解してもらいたい。

このような一連のステップは基本的なステップであり、事前知識として得ることはとても大切なことであるが、専門的な精神医療の助けが必要なケースも忘れてはならない。

【チームリーダーとしてのストレスコントロール】

ここでは、少し救助者側の視点に立ったところから話を進めていこう。次回の連載で紹介するチームビルディング(インシデント・コマンド・システム)の部分と若干かぶってくるが、ご容赦願いたい。

まず、災害対応にあたる市民レベルの救助隊、自主防災組織、自衛消防組織などさまざまな組織があるが、インシデント・コマンド・システム(現場指揮システム)の原則では、最初に現場に到着した者が現場指揮官としての任務に就くことになる。当然指揮権の委譲は適時行われていくが、誰かが現場の指揮を執らなければならないのだ。もしかしたら、それは読者のあなたかもしれない。

救助者としての本格的な活動に入ると同時に、生存者達の感情的な反応に対処していかなければならない。その際に強調しなければならないのは、現場指揮者が一人で作業責任や感情的なリアクションに相対するのではなく、チームとしてそれらの負担を分散させるということである。あくまでもチームとして対処していくことを共通の認識とし、時には十分な休憩時間を取り、作業内容、作業時間、役割分担を再編成しながら対応にあたるのである。

また救助者は活動中もきちんと栄養補給・水分補給を維持しなければならない。救助活動からチームメンバーを撤退させる場合は、チームリーダーはメンバーに対しハードワークから徐々にライトワークの任務へ移行させながら撤退させるなどの措置を講じた方がよい。

【災害の衝撃から回復まで】

生存者の心理状態は災害の段階ごとにそれぞれ変化をたどっていくので、救助活動に携わる者はそれを理解する必要がある。

衝撃段階:生存者は一般的に冷静な状態で、特にパニックに陥ることも無くしばしば無感情な面を見せる。
思考段階:衝撃段階の直後に続くフェーズで生存者は損害を評価し他の生存者の所在を突き止めようとする。この段階では日常的な社会活動は脇に置き、捜索救助活動など初動対応に協力する傾向が見られる。
救助段階:市民レベルの救助隊、自主防災組織や消防団が現場で活動を開始する段階では生存者は特に抵抗を見せずに救助者の指示に素直に従う。救助者を示すヘルメットやベストなどが必要なのは救助者自身を保護することはもちろん生存者の協力を得るためにも重要な要素なのである。
回復段階:この段階に来ると生存者は救助者と一線を置き、時には怒りや非難を救助隊に向ける場合がある。救助する立場の者はそのことをしっかりと事前に知っておくべきである。

【危機的精神状態】

対処する人々の経験値や能力からも違いはあるが、災害現場で下記に述べるような過酷な場面に遭遇したり個人の能力を超えた作業に従事した場合、本人やチームが望まない結果をもたらすことも考慮に入れなければならない。

・自分自身または他人に及ぶ生命への危険
・重傷者との遭遇
・自分を含む近隣の家や価値の喪失
・家族や友人の安否が不明で連絡が取れない状態


このような状況に陥ったときに人はあたかも別人のように振る舞い、決断力や記憶力が鈍る場合がある。また身体的にも健康を害することがあったり、一時的あるいは長期に渡って対人関係がうまくいかなくなったり性格の変化をもたらすこともある。このような心理的影響がもたらす望まない結果に対し、過剰に反応してはならない。助ける側の思惑とは関係なく起きてしまうものだと心得ることが基本である。