中国の汚職撲滅はまだまだ遠い(出典:Flicker)

ドイツ・ベルリンに本部を置く非政治組織であるトランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)が、毎年1月に発表する世界各国の腐敗認識指数(CPI:Corruption Perceptions Index)は、各国の腐敗・汚職の度合いを知る上で重要な情報となっています。

今年1月に発表された2016年のCPIは、世界176カ国について10の機関が調査した13種類のアンケート調査結果を基に計算された指数で、最も清廉な100から、最も腐敗している0までの数字で評価されています。176カ国の平均は43.0ですが、問題があるとされる50未満の国が全世界の約7割を占める結果となっています(ちなみに米国は74.0で18位、日本は72.0で20位となっています)。

近年、日本企業の進出が拡大している新興国ではCPIは低い状況となっています。例えば、BRICs、VISTA、NEXT11、ASEAN、計24カ国の平均は38.0であり、全世界の平均をも下回っている状況です。ちなみに、それら24カ国中、CPIが50以上の国はシンガポール(84.0、7位)、ブルネイ(58.0、41位)、韓国(53.0、52位)の3カ国のみという状況です。

このCPIが新興国で低い理由は、いくつか挙げることが出来ます。まず、新興国と言われる国は大国が多いということです。一般的に大国の多くは連邦制またはそれに準じる体制となっており、州政府の権限なども大きく、行政組織が重層化・複雑化・非効率化していることから、汚職・腐敗を助長する要因となっています。

また、行政組織が重層化することにより、公務員の数・権限が多いことも、その傾向を助長しています。さらに、新興国の多くの国が社会主義国またはかつて社会主義的な政治体制であったことから、公務員の給与が同国内の民間企業よりも抑えられていることが多く、汚職・腐敗問題が解決できない要因となっています。

海外ビジネスにおいて、現地政府・公的機関・国有企業等の汚職・腐敗の問題は、現地に進出している企業の活動に大きな影響を与えます。一般的に、どの国でも公務員などに対する贈賄などを禁止しており、厳しい罰則を課す国も多い状況です。外国公務員への贈賄禁止については、OECD外国公務員贈賄防止条約が1999年2月に発効し、OECD加盟国を中心に現在約40カ国が同条約に締約しており、国際社会でも取り組みが図られています。

なお、この40カ国の中にはOECD非加盟国であるブルガリア、ブラジル、アルゼンチン、南アフリカ共和国、ロシア、コロンビア等も締約しており、海外における贈賄等に厳しく対処する姿勢を示しています。

この条約の締約国は外国公務員に対する贈賄等を禁止する国内法を制定しており、特に米国では連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)に基づき、日本企業を含む多くの海外企業を摘発し、巨額な罰金を課すケースが数多く報告されています。また、英国の2010年贈収賄法(UK Bribery Act 2010)では、私人間の贈収賄も処罰対象とするなど、現状では世界で最も厳しい汚職行為に関する法令となっています。

米国、英国で摘発された例では、汚職・腐敗が実行された国の大部分が新興国であることから、新興国における汚職・腐敗の問題は、企業の対応如何によっては、この両国など先進国から摘発される可能性が大きく高まることに、十分留意する必要があります。

企業における対策としては、米・英当局のいずれも、「リスク評価」の実施を強調しています。つまり、国別にどの国で、腐敗防止関連法に抵触する可能性が高いかを評価し、リスクの高い国から対処していくことが推奨されています。ここでは、日本企業に特に留意が必要な主要新興国のCPIについて見てみたいと思います。