以下、9つのフォーマットを紹介する:

・ 被害状況報告書
・ 人的資源管理表
・ 物的資源管理表
・ インシデント報告書
・ 人員対応状況表
・ 配属状況表
・ トリアージエリア記録
・ 通信計画表
・ メッセージフォーム

               ※9つのフォーマット ダウンロード⇒pdf

 
 
 

■まとめ 

本シリーズで解説しているICSはあくまでも市民レベルまたは従業員レベルでのものである。しかし、この基本を押さえていなければ大規模・広域災害に発展していった時にどうなるのか想像していただきたい。徐々に拡大していく組織体制、多くの関係者が次々と関わる中で問題が複雑化していき、それら全てを調整しなければならない。これらを短時間で素早い意思決定の連続を行い、被害の拡大を最小限に抑えるためにはどうすればよいのか。最終的には統一化されたルールがなければ各関係機関が連携を取るのが困難になっていくのは明らかである。

ICSは1970年代にカリフォルニアで多発した森林火災を教訓として育ってきた仕組みであるが、次のような問題が起きるのは大規模広域災害に共通する課題である。

・ 一度に多くの人が、一人の監督者に報告するので処理しきれない。 
・ 関係機関がそれぞれ異なった組織構造になっており、組織的な対応が困難。 
・ 信頼のおける情報が流れてこない。 
・ 各組織で使用する用語がバラバラであるため、適切なコミュニケーションが成立しない。
・ 通信装置や通信手順が統一化されていない。 
・ 関係機関の間で共通の計画を策定するシステムがない。 
・ 指揮命令系統が不明確(どこで誰が意思決定しているのかよく分からない)。
・ 活動目標が不明確。
・状況認識の統一が困難である。


このような諸問題を解決する一つの手法がICSであるがICSという呼称に惑わされてはならない。言い換えればICSとは一つのチームとして戦うための野球のルールであり、サッカーのルールであり、または将棋のルールなのである。それぞれ身にまとうユニフォーム(背広組、制服組に関わらず)は違ってもICSの概念を少しでも多くのステークホルダーが取り入れ、日本版ICSを確立し、オールジャパンのチームとして戦える体制を一日も早く実現することを願うばかりである。 

次号ではICSの概念を基に、火災防護に関する実践的な解説をする。

参考文献:
•COMMUNITY EMERGENCY RESPONSE TEAM. Basic Training Instructor Guide
.FEMA.DHS
•消防業務エッセンシャルズ第6改訂版日本語版
•晃洋書房「3.11以後の日本の危機管理を問う」(神奈川大学法学研究所業書)務台俊介著・小池貞利著・熊丸由布治著・レオ・ボスナー著

(了)