2017/04/12
熊本地震から1年
じっくり考える時間がない
送られてきたデータは、センターで分析しました。ただし、最初の1週間ぐらいは、整理して考えるようなことはできません。しんどかったのは、何で連続的に地震が起こったとか、次にどうすればいいのか、サイエンスとして次に何が起こり得るのかということを、じっくり考える時間がないことです。
もちろん、地震調査委員会などでいろいろ議論されるでしょうが、少なくとも僕はそういうアカデミックな議論が全然できない状態で判断しなければいけなかった。例えば、震源分布が次から次へと出てくるのですが、それを、いろいろな視点からスライスをして分析することができれば、どういう滑りがあったとか、どのように余震が広がっていくかを常に見ていくことができ、先々起こることが推測できるかもしれない。でも、データを取ってからビジュアル化するまでのところが完成されているわけではありません。そもそもじっくり見る時間がないわけです。
ただし、21日に、京大、東大、東北大の先生方が来てくれて、22日に観測会議というのをやることができ、頭の中が整理できました。
今回の一連の地震がなぜ起きたのかというのは、これから解明していくことになるのでしょうけど、ダイナミックトリガーという、本震の地震の波で違う地域に大きい地震が起きてしまうというのは、なかなか目の当たりにすることはなく、びっくりしたことを覚えています。
マスコミ対策が必要
地震後に一番大変だったのが電話対応です。本当に多くの電話がかかってきました。ほとんどがマスコミです。マスコミ対応については、相手に察しにくい電話番号を用意して東京で対応するとか、何か方法を考えておく必要があると思います。
もう1つ、反省点としては、情報のパイプ役を置いていなかったことです。連絡を取りたい先生からメールは時々来るけれども、その情報を関係者で共有するというようなことが、あまり上手にできませんでした。それから、こちらは現場の対応で精一杯なので、こちらの状況を理解してくれて、私の状況の説明の仕方などについて、「それではわからないでしょう」と客観的に指摘してくれる人、整理してくれる人が必要だと思いました。
既定の分析が役に立たない
今回、改めて勉強になったのは、何回も大きな地震が発生すると、既定の分析が役に立たないということです。刻一刻と変化する状況に対応して分析を進めると同時に的確な情報を発信していくことは、とても難しいことですが、大事であるということが認識できました。設置した観測点はリアルタイムで10点ですが、オフラインも入れたら全部でおよそ80点にのぼりました。すべて維持するには経費が掛かりますので、余震活動の状況から判断して、12月ぐらいにはオフラインの点の多くは撤収しました。
支援側との約束ごと
支援を送り込む側との約束や体制についても考えておく必要があります。今回は多くの機関の助けによって観測ができたけれども、観測だけでなく、いつまでにどんな人を送るか、何をしてもらうか約束をちゃんとしていないといけないと思います。研究者以外の事務の人を電話番に送ってもらうことなども考えた方がいいかもしれません。宿を取ったり、電話を受けたり、リストを作ってくれたり。例えば、電話がかかってきたマスコミのリストをつくってくれるだけでもありがたい。特に記録係や写真係は絶対必要です。現場研究者では手が回りません。ですから、そういう約束、あるいは応援協定を大学間でしておいた方がいいと思うのです。
(了)
熊本地震から1年の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方