2015年の鬼怒川決壊の際、茨城県常総市職員は対処に追われた

被災者のPTSD

東日本大震災、鬼怒川決壊、岩手県岩泉町の大水害などの自然災害の現場を歩き、地元自治体や被災者を訪ねて被災体験や生活再建に耳を傾ける時、被災者が時間の経過にかかわらず心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder、PTSD)で苦悩されている事実を知った。PTSDを発症した人がうつ病、不安障害などを合併させるケースも多いという。人生はやり直しがきかない。それだけに心からぬぐえないトラウマは深刻である。

周知のように、PTSDは命の安全が脅かされたり身内を失う出来事(戦争、天災、事故、犯罪、虐待など)によって強い精神的衝撃を受けることが原因であり、著しい苦痛や生活機能の障害をもたらすストレス障害である。症状が出てまだ1カ月を経ていないものは急性ストレス障害である。慢性の心的外傷から抜け出せない人も少なくない。

専門書やインターネット情報によれば、以下の3つの症状が、PTSDと診断するための基本的症状である。

1.精神的不安定による不安、不眠などの過覚醒症状。
2.トラウマの原因になった障害、関連する事物に対しての回避傾向。
3.事故・事件・犯罪の目撃体験等の一部や、全体に関わる追体験(フラッシュバック)

被災者(患者)が強い衝撃を受けると、精神機能はショック状態に陥り、パニックを起こす場合がある。機能の一部を麻痺させることで一時的に現状に適応させようとする。そのため、事件前後の記憶の想起の回避・忘却する傾向、幸福感の喪失、感情鈍麻、物事に対する興味・関心の減退、建設的な未来像の喪失、身体性障害などが見られる。精神の一部が麻痺したままでいると、不安や頭痛・不眠・悪夢などの症状を引き起こす場合がある。

被災者の心の救済は、被災地の復興事業同様、いやそれ以上に重要視しなければならない。

医学的治癒の方法には薬物療法や精神療法があるという。心理療法のうち、持続エクスポージャー療法はトラウマに焦点を当てた認知行動療法であり、セラピストとの会話を通じて心的外傷に慣れていく心理療法である。国際的に推奨されているとされる。