海外からのレポート
UK Experience of the Impact of Volcanic Eruptions
編集部注:「リスク対策.com」本誌2012年11月25日号(Vol.34)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年5月23日)

上野サマンサ

噴火による異常気象「夏のない年」 
1784年、アイスランドの火山の亀裂から噴火が発生した。1億2000万トンもの亜硫酸ガスが大気中に噴出し、ヨーロッパ中が厚い霞で覆われた。イギリスではこのガスによって2万3000人もの野外労働者が命を落とし、さらに8000人もの死者をもたらす非常に厳しい寒波に見舞われた。 インドネシアでは1816年にタンボラ山が噴火。この影響で、世界各地で異常気象が発生し、アメリカ北東部やイギリスを含む北ヨーロッパでは「夏のない年」が訪れた。この年は穀物の不作による、深刻な食糧不足も発生した。

5日間にわたる欠航 
2010年にアイスランドで起こったエイヤフィヤトラヨークトルの噴火もイギリスに影響を及ぼしたが、その影響は過去の噴火と比べると小規模だった。 しかし、火口から噴出された火山灰はジェット気流にのって第二次世界大戦以来、最大の航空事情の混乱をもたらした。多くのヨーロッパの国では5日間、航空便は欠航となり、万人以上の旅行者に影響を及ぼした。旅行者の中には当時ツイッターを使って宿泊先を探したり、助けを呼ぼうとする人々もいた。 航空会社は、この噴火による最も影響を受けた業種だ。全ての航空便をキャンセルしなければならず、再予約やルートの変更も許されないほどであった。航空業やその他貨物輸送に関わる業種だけでなく、ホテルや観光地にも影響が及んだ。 2010年のこの経験から、ある航空会社のBCP担当者は、航空便の被害を最小限に抑えるための準備や情報の整理の仕方などについて6つの教訓を示してくれた。

6つの教訓
01 政府機関は火山灰による雲の動きを正確に予測し、使用可能なあゆる設備をチェックしなければならない。
イギリスでは噴火の初期の段階で、通常であれば火山灰の密度や分布の測定に使用されたであろう航空機までも飛行を停止し、メンテナンスのため格納庫に保管していた。

02 イギリスの航空管制局はBCPを事前に用意し、いかなる理由による航路の減少にも対策を執らねばならない。
全ての当事者はこの国家規模の計画に協力する必要がある。

03 航路以外にほとんど代替手段のない航空便は、他の便を犠牲にしても最優先に用意しなければならない。
たとえば状態の良い道路や鉄道などの陸路が残されていれば、国内線はキャンセルしてその代替として陸路を使い、便数の減少の影響がより大きい国際線は優先的に運行すべきである。

04 政府の気象学者と空路に関するプランナーは共に協力しなければならない。
空路のプランナーに最新の火山灰を含んだ様々な雲の動きを理解させること、火山灰を避けるために代替ルートを選択させること、そして燃料節約の観点から効率の良いフライトを促すことが重要である。

05 政府は航空会社に対して優先順位を与える必要はなく、安全な航路の確認と情報共有を行うだけでよい。
観光に重点をおく交通よりビジネスユースの交通を優先すべきだといったような問題が起こる可能性もある。そのような取り決めは政府にとって全く意味がない。仮に政府がこのような議論に加わり決断を下した場合、それによって不利益を被る当事者から補償を求められる可能性がある。また観光客や航路に重点を置く航空会社は倒産の危機に瀕するかもしれない。

06 火山灰の多岐にわたる悪影響のため、BCPを実行しようしても、と通常予定されていた運用が不可能な場合がある。
このような遅延やキャンセルなどのあらゆる妨害がある場合を想定して、可能な限り効率的な対策をBCPに盛り込む必要がある。