2017/05/12
ランサムウェアと最新セキュリティ情報
本日はセキュリティ担当者などへのヒアリングをもとにしたリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックのサイバーセキュリティ対策とその成果、そしてこれらを踏まえて企業が何に取り組むべきかについてお話します。
大会期間中にリオ市を来訪したのは100万人超です。政令指定都市ができるくらいの人々がリオを訪れました。約5万人のボランティアが参加して、大会に協力しました。我々は危機管理専門のコンサルティング会社ですから、話を聞いたのは国や組織委員会の担当者、リオ市のオペレーションセンターの責任者、そして風評被害をモニタリングしている民間企業などです。
リオの大会組織委員会が注力していたサイバー対策は3つ。1つはサイバーハクティビズム、2つにフィッシングなどのオンライン詐欺、そしてDDoS攻撃でした。この3分野の実際の対策を聞くと演習やテストに励んだということです。
具体的なサイバーハクティビズム対策に、125のセキュリティテストを20万時間かけて実施したそうです。セキュリティテストには脆弱性診断、ペネトレーションテスト、サイバーウォーゲーム、テクニカルリハーサルなどがありました。サイバーウォーゲームは、使っているライブシステムに攻撃を仕掛け、守る訓練です。被害が出たらインシデント対応まで実施します。攻撃チームと守りチームで争う形式でした。
興味深かったのは、こういったテストでは攻撃チームをレッドチーム、守備チームはブルーチームと言いますが、組織委員会の訓練ではグリーンチームを作りその演習を評価、分析させていました。バックオフィスのシステムや競技に使うシステムなど合わせて3回のサイバーウォーゲームを実施したとのことです。
ほとんどの技術者が参加したテクニカルリハーサルでは、準備した1000以上のシナリオを用いて実際に働いている各会場でさまざまなトラブルをシミュレート。例えば、普段使っているPCの電源が入らないという本当に小さいインシデントやシステムにログインできないなど、用意した様々なシナリオを次々に配布していきます。それに対して現場にいる人が対応する。テクニカルリハーサルは計2回実施したそうです。
オンライン詐欺対策は、早い段階でオリンピック関連に似たドメインを取得。他にも似たような数千のドメインをモニタリングし続けた。サービスプロバイダーと連携し、明確にマルウェアが含まれているケースはテイクダウンを実施。どんどんサイトを落としていったそうです。
日本だと法律的にここまでできるのか疑問がありますが、ブラジルでは全てテイクダウン対応でした。自動システムによるウェブサイトの攻撃遮断は2300万回。自動検知のセキュリティアラートの回数は400万回だったとのことです。
リオの大会期間中、約1カ月間にあったDDoS攻撃の回数は223回でしたが、組織委員会には混乱はありませんでした。しかし、リオ州政府や警察、公営の銀行がDDoS攻撃で軒並みやられました。ですから東京大会のときには民間企業もとばっちりのような攻撃を受ける可能性が高いです。リオと東京は世界的な知名度に圧倒的な差があります。ですからハクティビストやハッカーが名を挙げるためにターゲットにする東京大会は非常に危険だと思います。
実は、大会直前にアドビ関係に脆弱性が見つかっていました。しかし、5000台のパソコンにパッチをあてた後のトラブルを考え、そのリスクを受け入れて利用し続けたそうです。
ランサムウェアと最新セキュリティ情報の他の記事
おすすめ記事
-
-
過疎高齢化地域の古い家屋の倒壊をどう防ぐか
能登半島地震の死者のほとんどは、倒壊した建物の下敷きになって命を落とした。珠洲市や輪島市の耐震化率は50%程度と、全国平均の87%に比べ極端に低い。過疎高齢化地域の耐震改修がいかに困難かを物語る。倒壊からどう命を守るのか。伝統的建築物の構造計算適合性判定に長年携わってきた実務者に、古い家の耐震化をめぐる課題を聞いた。
2024/03/28
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月26日配信アーカイブ】
【3月26日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:四半期ニュース振り返り
2024/03/26
-
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月19日配信アーカイブ】
【3月19日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:副業・兼業のリスク
2024/03/19
-
リスク担当者も押さえておきたいサイバーセキュリティ対策の最新動向
本勉強会では、クラウド対応のサイバーセキュリティ対策の動向を、簡単にわかりやすく具体的なソリューションの内容を交えながら解説します。2024年3月8日開催。
2024/03/18
-
発災20分で対策本部をスタートする初動体制
総合スーパーやショッピングモールなど全国各地のイオン系列の施設を中心に設備管理、警備、清掃をはじめとしたファシリティマネジメント事業を展開するイオンディライト(東京都千代田区、濵田和成社長)。元日に発生した能登半島地震では、発災から20分後にオンラインの本社災害対策本部を立ち上げ、翌2日は現地に応援部隊を派遣し、被害状況の把握と復旧活動の支援を開始しました。
2024/03/18
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方