講演する東京大学大学院医学系研究科集中治療部部長の森村尚登氏

社団法人日本医療資源開発促進機構は12日、「巨大災害に学ぶ 医療資源有効活用のイノベーション」と題し、「都市防災と集団災害医療フォーラム」を開催した。

登壇した東京大学大学院医学系研究科集中治療部部長の森村尚登氏は、大災害への体系的な医療アプローチとして①指揮/統制(Command)、②安全(Safety)③情報共有(Communication)④リスク評価(Assessment)⑤トリアージ(Triage)⑥治療(Treatment)⑦搬送(Transport)を挙げ、「これまで災害医療では後半の3つのTTT(トリアージ・治療・搬送)が重要視されてきたが、本来であればそれ以上にメディカルマネージメントとして前半の4つのCSCA(指揮/統制・安全・情報共有・リスク評価)が重要」とした。

さらに「現在は行政・日赤・医師会・病院などさまざまな災害医療チームの全容を把握・統括する組織がない。災害時医療には国家的な戦略と統括機関の設置、そして情報の一元化が必要」と、国家的な災害医療対応の重要性について訴えた。

課題解決の1つとして同氏は昨年4月に発足した日本救急医学会、日本集中医療学会など7つの学術団体が加盟する「2020年東京オリンピック・パラリンピックに係る救急災害医療体制を検討する学術連合体(コンソーシアム)」に言及。「さまざまな関連する学会が協力し、課題の解決に向けて取り組んでいきたい」と意気込みを話した。

■「2020年東京オリンピック・パラリンピックに係る救急災害医療体制を検討する学術連合体(コンソーシアム)」
http://www.jaam.jp/html/info/2016/pdf/info-20160520.pdf

パネルディスカッションの様子

フォーラムではほかにも戸田中央医科グループ災害対策特別顧問の野口英一氏から「災害医療を多元的にみる」と題した講演が行われたほか、厚生労働省DMAT事務局の小井土雄一氏、東京都医師会副会長の猪口正孝氏、産経新聞科学部記者の伊藤壽一郎氏、大和ハウス工業取締役専務執行役員の堀福次郎氏らが加わり、パネルディスカッションを開催。熊本地震の関連死問題や避難所における医療問題などについて活発に話し合った。

次回フォーラムは東京大学病院において9月15日に開催予定。

(了)