2017 ramming attack in Stockholm, Sweden(出典:Wikipedia)


18日、北ロンドンのフィンズベリーパーク(Finsbury Park Mosque 7-11 St Thomas's Rd, London N4 2QH)にあるモスクの外で、テロリストとみられる3人が乗った車(バン)とナイフによる「ラミング・アタック・テロ(Ramming Attack Terror)」が発生。1人が死亡し、およそ10名が病院に搬送された。

ラミング・アタック・テロとは、車両で無差別に人々をひいたり、無差別にナイフを振り回して襲撃したりするという秋葉原殺傷事件型のテロで、Rammingとは「突っ込む」と「突き刺す」という意味がある。


London Terror Attack June 2017 (出典:Youtube)

以下、ロンドン市警察のレポートやイギリスのテレグラフ社による報道などから、事件の概要を時系列に追ってみる。

■ロンドン市警察
https://www.cityoflondon.police.uk/Pages/default.aspx

■テレグラフ
http://www.telegraph.co.uk/news/2017/06/19/finsbury-park-number-casualties-vehicle-hits-pedestrians-seven/

<午前1時12分>
Seven Sisters Road(セブンシスターズロード)で車が複数の人をはねたという通報を受信。複数の警察車両と救急車を手配し、現場へ急行。通行人により取り押さえられたテロリスト1名を逮捕。

通行人の証言により、追突車両には3名が乗っており、テロリスト達は「kill all Muslims:すべてのイスラム教徒を殺す」と大声で叫びながら車両で人々を跳ね、後部ドアから2名のテロリストは脱走したとの情報を得て、すぐに追跡手配開始。
<午前1時15分>
ロンドン市救急局の救急車3台出動。※ロンドン市救急局によると午前12時15分に指令を受けて複数の救急車を出動させたという報告あり。
<午前1時20分>
セブンシスターズロードで緊急出動中の車両の追突事故発生。道路閉鎖により後続の緊急車両に別のルートで現場直行することを指示。
<午前1時31分>
フィンズベリーパークのイスラム教モスク外側で事故が発生したことを覚知。
<午前1時38分>
6名が道路に倒れており、そのうち1名は警察官により、CPR(心肺蘇生法)を受けていると現場付近のカフェでコーヒーを飲んでいた目撃者から通報。
<午前1時41分>
ロンドン道路交通局がセブンシスターズロードの道路閉鎖が長時間になることを発表。
<午前1時46分>
画像(映像)通報により、現場で複数の警察官が倒れている負傷者の救急処置を行っていることを確認。
<午前1時48分>
「ラミング・アタック を起こした車両は、犯人が運転をコントロールできなかったのか、道路ではなく壁沿いに走り、歩道に居た通行人を次々に跳ねた」という目撃証言を得る。上空にはヘリコプターが円を描いて飛んでいた。
<午前2時06分>
「ホラー映画を見ているかのように、人々が叫びながら逃げ惑うのを観たが、そのときには人が地面に倒れているのに気づかなかった」との通報を得る。
<午前2時13分>
イギリスイスラム教協会によるとフィンズベリーパークにあるモスクのイスラム教関係者はすでに帰宅しており、犠牲者はイスラム教生活保護施設の方々だと思われると発表。
<午前2時18分>
事故発生後すぐ、バイスタンダー(通行人)が追突車両から逃げようとしたテロリスト1名と格闘し、1名を確保したという通報を得る。
<午前2時31分>
ロンドン市救急局によると午前12時15分に指令を受けて複数の救急車を出動させたという報告有り。
<午前2時34分>
イスラム教生活保護施設では、貧困者を励ますためのイベントが行われていたとの通報有り。
<午前2時44分>
イベントの最後の祈りが終わった直後にテロリストが乗った白いバンが突っ込んできた。
<午前2時50分>
バンが突っ込んできて人々がはねられた後、すぐに数名の通行人が倒れた人々の止血や心肺蘇生法などの救急処置を行っていたが、ほとんどの通行人は叫びながら逃げていった。

<午前3時27分>
ラマダン財団のムハンマド・シャフィーク(Mohammed Shafiq)は、過激主義に反対するムスリム組織で、この攻撃を非難する声明を発表した。

「私は、ロンドンのFinsbury Park Mosqueの外にて無謀で邪悪なバンによるテロ攻撃により犠牲となったイスラム教徒の崇拝者に対して追悼の意を申し上げます。

目撃者によれば、これは無実のイスラム教徒が、彼らのイスラム教徒としての人生を歩むことに対する意図的なテロ攻撃だったこと。この攻撃がイスラム教徒に対する意図的なテロ攻撃であることが確認されれば、これは宗教テロ行為として分類されるべきだということを明確にし、具体的に対策されるべきである。

 

英国に住むイスラム教徒のコミュニティは、この凶悪な暴力に対して、すべてのまともな人々が私たちと立ち向かうことを求めている。

一般のイスラム教徒に対しての奇襲的な攻撃による恐怖はここ何年も続いており、極右イスラム過激主義者に対する憎しみを継続的に助長させている。

この先の解決は難しいだろうが、統一性と忍耐性をもって極右イスラム過激主義者に勝利するだろう。我々は、これらの極右イスラム過激主義者がさらに多様なコミュニティを分裂させて拡大することを許すことはできない。

犠牲者とその家族全員に哀悼の意を表します。私は彼らのことを祈り続けます」

 

<午前3時35分>
モスク北側の路上で1人ナイフにより刺されたという通報有り。
<午前3時46分>
ロンドン市長のサディク・カーン氏がTwitter上でテロが起こったことと緊急対応中とのコメントを発表。
<午前3時53分>
テロに対しての怒りを表した野次馬が大勢集まってきて、警察が対応している。 
<午前4時04分>
イギリス首相のテレサ・メイ氏が記者団を通じて、国民に今回の事件で現場で治療を受けている犠牲者になった方々とその家族に心配の意を表じる。
<午前4時05分>
テロ事件が起こったモスクの代表者が、施設前で犠牲者に対して祈りを捧げたことを伝えた。
<午前4時08分>
通行人に30分ほど取り押さえられていた1人のテロリストは「俺はすべてのイスラム教徒を殺す!」と何度も叫んでいた。また、テロの車両にひかれた犠牲者は約10名で、ほとんどが脚の悪いお年寄りなど高齢者の方々だった。
<午前4時13分>
通報者の1人は、バンの下に引かれたままの人は出血しており、数人でバンを持ち上げて助けようとしたが重くて動かなかった。


声を掛けたが反応が無く、助けようとしているときにテロリストの1人がナイフで刺そうとしたが、数人の人たちが一斉にテロリストに襲いかかり、1人が武器を取り上げて押さえ込んだ。その後、何度もテロリストは押さえ込まれた状態から脱出しようと試みたが人々がそれを許さなかった。
<午前4時33分>
ロンドン市警察局のテロ対策官が現場到着。
<午前4時52分>
近年、ロンドン市内で立て続けに起こっているイスラム教に対するテロ行動を受け、すべてのモスクにおいて監視や警備を強化していたにもかかわらず、発生してしまった今回のテロに関し、イスラム教信者に対してヘイトクライムのデモ活動などは起こさず、ラマダンが終わるまで、法による判決を待つよう、静かに祈りを捧げるようには伝えているが、テロに遭遇した際には勇敢に戦うことも必要だとも伝えている。
<午前4時53分>
ロンドン市救急局が8名を病院に搬送したと発表。その他、軽傷者は現場にて治療継続中。


日本においては、イスラム教を敵対視したと思われるテロは起こる可能性はほぼないと思われる。しかし大勢の人がいる場所や道路に車で突入し、多数を跳ねた上で、車両から降りてナイフで次々と殺傷するラミング・アタック・テロは起こる可能性はある。

これは歩行者天国に限らず、日本国中の直線道路に面する歩行者が多い場所や人が集まる路上イベント会場なども同じく危険性があり、犯人が事前に犯行計画や実行する時間や場所などを詳細にブログやSNSで発信したとしても、把握することは難しいだろう。

予防する方法としては、サーバーやブログのプログラムに犯罪に関するキーワードを打ち込んだ際には「Post Warning(書き込み注意)」を警告する、もしくはテロ目的ではないこと、優先的に監視されることなどを前提に、Webサイトで同意してから書き込めるようにするなどのテロ防止対策は必要かもしれない。

また、キャッシュや書き込み履歴の内容に殺人やテロ、危険なネガティブマインド、極端で強いアンチ政治、ヘイトコメントなどが多い場合は、カウンセリングやメンタルヘルスについてのアドバイスを受けられるサイトへ誘導するようにしてもいいかもしれない。

感情的にではなく、具体的に問題を解決する手法はいくらでもあり、緊張させない対話法もある。ネット上のコメントも、ただ、感情をぶつけたり、書き込むのではなく、解決策を具体的に提案するなどの落ち着いたコメントをするのをモラルになることが望ましいと感じる。

また、外務省が警告しているようにラマダンが明ける6月27日まではロンドンのみならず、世界中で警戒が必要であることを付け加えておく。

■ラマダン月のテロについての注意喚起(外務省海外安全ホームページ)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2017C107.html

(了)